はじめに
この本を手に取っていただき、誠にありがとうございます。私もまた、50代に差し掛かり、一昨年、私を生んでくれた大切な母を亡くしました。その出来事をきっかけに、私自身が近い将来の老後に関して深く考えるようになりました。そして、多くの50代のサラリーマンが直面する定年後の問題に目を向けるきっかけとなりました。
定年後の生活において、多くの人々がコンビニバイト、警備、清掃などの仕事に頼ることがあります。これは決して悪いことではありません。しかしある機会、若い世代の中で働く、居心地の悪そうな顔をして必死でレジの打ち方を覚えてようとしているご年配の姿をコンビニで見かけるようになりました。外国人の若いバイトから叱られる光景を見た時には、本当に心がせつなく痛みました。これが仕方ないことはわかっていますが、どうにもやるせない気持ちが膨らんできました。これまで懸命に働き、日本を支えてきた人たちが、定年後でも自分の能力を活かし、充実した生活を送る機会を持つべきだと信じたいからなのでしょう。
さらに、私自身が大動脈解離で開胸手術を経験し、心臓に人工血管を入れることとなりました、九死に一生を得たことも大きな転機になりました。この経験から、人生は限りあるものであり、50年という歳月の中にはさまざまな出来事が起こることを実感しました。手術を受けたのはわずかふた月前のことですが、その経験によって、私はより一層日々を真剣に生きることの大切さを痛感しています。スティーブ・ジョブズのように、時間を大切にし、人生を充実させるために努力することが私の目標となりました。
今の私の一番の望みは、同世代の皆さんに向けて、新たな未来を提案することです。この本を通じて、50代のサラリーマンの皆さんが、本業をやめずに兼業就農を実現し、田舎に二拠点目か定住地をみつけ、「里山年金」という新たな収入源を築く道を示したいと思っています。
私は現在、千葉県でチバニアン兼業農学校という兼業就農に特化した学校を主催しています。この学校の生徒のほとんどは、40代から50代の方々であり、彼らは低迷する日本の中で定年後の生き方を、就農を通じて懸命に模索しています。
本書では、私自身の体験や考え、そしてチバニアン兼業農学校での学びや成果を基に、本業をやめずに兼業就農し、定年後に「里山年金」という新たな収入源で自らの意思で生業を行うことを目指します。これは、単なる農業の収益だけでなく、田舎に存在する様々な資源を活用し、手間や費用をかけずに収益を上げる方法です。具体的な手法や成功事例、実践ノウハウを通じて、「里山年金」の実現を説明していきます。さらに、就農の参入障壁や節税などの重要なポイントも詳しく解説します。
人生は限りあるものです。私たちはその中で充実した人生を送るために、自らの力で未来を切り開いていく必要があります。これまでの50年という歳月の中に喜びや悲しみ、挑戦や困難が詰まっています。これからの人生もまた同じです。できれば、すべての同世代に新たな価値観をもとに、改めて挑戦の人生となり、本書がその一助となり、皆さんに新たな可能性と希望をもたらすことを願っています。
最後に、私の母への思いと共に、本書の読者の皆さんの健康と幸福を心からお祈り申し上げます。
チバニアン兼業農学校校長 平山 泰朗