チバニアン兼業農学校の紹介

チバニアン兼業農学校(以下、当校)とは、2021年9月のコロナ禍に私が、首都圏の人に「仕事をやめず、数か月の研修で農家になる!」をキャッチコピーとして設立した農学校です。

これまでサラリーマンとして、本業を続けながら首都圏で兼業就農をすることはほぼ不可能でした。特に遠く東京と千葉の奥地のような二拠点就農だと該当市町村の農業委員会が許可を出さない場合がほとんどでした。そのような状況の中、千葉県睦沢町の協力を得て、兼業就農でも就農できる環境を整えました。

現在、首都圏での就農者60名以上、更に就農申請支援のための授業を行うことで千葉県神奈川県茨城県で兼業就農する仲間が増え続けています。また、今後成田市の南に位置する芝山町のご協力を得ることが現時点で決定し、更に兼業就農がしやすい地域が増えています。

当校の大きな特徴は、原則、本業をやめずに新規就農をするということでしょう。就農するという意味は、各市町村の農業委員会が保存する「農地基本台帳」に名前と耕作面積が記載され、申請をすると農業委員会委員長の署名で「耕作者証明」が出される状況を指します。この状況になることを私たちは”就農“したと定義しています。はじめて自分の農地を耕して法的に農家になったと言えるのです。

一般的に、知り合いの農家から農地を借りて農業をしているという状況は、ヤミ小作とされ、それほど厳しく取り締まられている訳ではありませんが、違法とされています。また一般的な就農スクールは、栽培を中心に講義し、この「農業者になる」という点をおろそかにしている傾向もあります。当校としては、わずか三カ月という大変短い期間で、まずこの点に力を入れ、法的な就農者になり、その後、栽培などを継続学習していくということをカリキュラムとしています。

生徒のほとんどが兼業就農とはいえ、正式に農業委員会の許可を得て、法的に認められるため、専業農家が利用できる様々な施策が利用できることとなります。たとえば、地域のJAの加盟でも、正式な農家でないと認められません。もしくは地域の農業委員会が催す農薬散布等事業にも正式には参加できないこととなるのです。

2023年4月に、農地法の下限面積撤廃の改正が行われ、今まで必要だった就農時の最低開始面積要件が撤廃されました。今までは、どのようなやり方で就農したとしても最低5反以上(5000㎡)での就農開始が基本要件とされており、本来2反程度で就農したくとも不要な3反を耕す必要があったのです。この戦後第二の農地開放と呼ばれる改正により、新規就農がしやすくなった側面は確かにありますが、残念ながら目を見張るような就農者の増加とは、今のところなっていないようです。

元々、新規就農をする場合には、農地下限面積要件常時従事要件農地適正利用要件技術要件地域調和要件が必要とされ、この要件を満たすことで該当農地のある農業委員会より許可を経て、就農ということが一般的なルールでした。

農地下限面積要件は、地域でも別途策定できたのですが、原則5反以上の利用が必要とされてきました。常時従事要件というのは、年間150日以上、農業に従事しなければならないという要件です。農地適正利用要件とは、農地がいつでも栽培ができるような状況に保つ必要があるという要件で、技術要件とは、就農希望者が希望する栽培物に対して栽培できる技術を持つかどうかという要件です。最後の地域調和要件とは、例えば大きな田んぼ群のど真ん中において不耕起栽培をして、雑草や虫などで周囲に迷惑をかけてはならないということになります。

つまりこの要件の中で、一番厳しいとされてきた農地下限面積要件がなくなったため、農業委員会が就農を受けいれやすくなったのではないかとされてきましたが、実際は、そうでもないようです。

農地の取得に関しては、売買でも賃貸でも厳しく制限されてきました。国土の狭い日本で農地は食料を生産する重要な土地であり、無秩序に転用されることに一定の制限をかけることが必要だという大義名分が連綿と伝わってきたのです。また農業者の組織である農業委員会は、65歳以上高齢者の方々が運営されているため、保守的な思考で、外部からの新規参入をはじく傾向にあるのです。また今までの経験則からも都会から来て一時的に就農し、その後撤退するという事例を見てきた彼らにとっては、面倒ごとを増やさないためにも外からの新規参入を阻止するという考え方に陥るのもやむ得ないとも言えます。

結果的に農地下限面積を理由に断ることはなくなったかもしれませんが、その他要件に遠方からの新規参入を断る傾向にあると思います。「里山年金」を作ろうと農地を取得し、新規参入をはかった場合、主として常時従事要件か、技術要件で断られることとなります。確かに遠距離から通う兼業農家にとっては、150日とされる常時従事要件を盾に断られれば、仕方ないということにもなりますが、実は農水省は、栽培作物によっては、そもそも150日かからないものもあるので、その限りではないと通達を出しています。150日というのも一日8時間が求められるわけではなく、たとえば田んぼの水管理の30分でも一日ということとなるのです。そもそもその時間自体を管理・監督する人がいない状況です。技術要件に関しても、前農地管理者が技術の指導をするということであれば、技術要件をクリアします。

しかし農業委員会の立場となれば、「技術はないが都会からサーフィンと波がない時には農業をしたい」という人や「何もわからないのですが、農業したらいいと親が言うんです」というような人を受け入れて、地元でもめ事を起こしたくないということも本音で、それもまともな考えだと思います。農業を中心とする地域社会では、いまだ「」をもって「尊し」となすという発想があり、また高齢者が中心に地域の農業を担っている訳ですから、余計なもめ事が起きることを避ける傾向にあるのです。

一方で農業委員会も高齢化し、減り続ける農業従事者に対する危機感もあります。その点では、きちんとした手続きを経て、就農する方々は受け入れたいという姿勢は持っています。当校は、その橋渡しをすることで兼業農家として新規就農する人たちを増やし続けているのです。

 ポイント 

?兼業就農するには、ハードル?がまだまだ高いのも事実ですが、様々な方法?️を駆使すれば、必ず可能となるのです。ぜひ挑戦して、新しい人生?を切り開きましょう