具体的なステップと計画作り


農地の探索方法

農家として新たな一歩を踏み出すための具体的なステップと計画作りは、慎重かつ緻密な行動が必要です。まず、農地探索に取り掛かりましょう。これには、農林水産省が提供する「農地ナビ」を活用するのがベストです。このサイトを通じて、農地の地番や利用状況を確認することができます。通常、Google Mapなどでは農地の地番を調べることはできませんが、農地ナビを使用すれば農地の情報を得られます。

農地ナビの利用手順は次の通りです。
  1. 農地ナビにアクセス。
  2. 就農希望行政」へ移動して、希望する地域を選択。
  3. 地図上に表示される農地ピンをクリックし、農地の住所を特定。

農地ナビでは、遊休農地を探すことができ、また同じ農地の耕作者を分類することも可能です。これにより、あなたのニーズに合った農地を効率的に見つけることができます。

次に、所有者情報を知る必要があります。これは「登記情報提供サービス」を利用して取得します。これは農地の所有者にコンタクトを取り、交渉を進めるために必要な情報です。

また、農地探しには地元の協力も不可欠です。該当する市町村の農業委員会に農地の紹介を依頼するという方法もあります。地域の農業委員会は、地元の農地情報に精通しており、あなたの要件に合った農地を見つける手助けをしてくれる可能性が高いです。前述した下限面積要件の撤廃により、狭い面積での就農が可能となり、兼業就農が容易になりました。

これらのステップを踏むことで、成功に繋がる農地探しと計画作りを行うことができます。農家として、新たなキャリアを築く上で情報収集と地域との連携は欠かせません。明確な目的を持ち、戦略的に行動しましょう。

 ポイント 

??農水省が提供する農地ナビ には、様々な機能があり、⏳覚えるまで結構な時間がかかりますが、通常の人は、一つ見つけることができれば十分なので、全部覚える必要はありません✋⚠️注意すべきは、いつその情報が掲載されたかということで年数が古いと状況が変わっている場合もありますので、??Google Mapを活用し、ストリートビューで把握したり、実際に現地に赴いて見に行くなどの方法があるでしょう?‍♂️?また登記情報サービスを使うには、時間がかかりますので、早めに申込みましょう?

農業委員会許可のハードル

農業委員会の許可は、農地取得や賃貸に際して必要不可欠なステップです。各市町村に独立した農業委員会が設けられており、その許可基準地域により異なります。ここで一番に注意しなければならないことは、各市町村の農業委員会の考え方がそれぞれ独立しているという点です。私たちは通常Aの行政から断られたらBの行政でも断られてしまうと考えがちですが、その常識は農業委員会に関しては捨てた方がよいでしょう。また委員会のメンバー構成によっても、かなり違います。一般的に委員は数年ごとに、推薦などによって選ばれることとなりますが、基本的に高齢の農家の方の指定席になっている場合が多いようです。そのような人選ですから、保守的な発想をされる人が多いのもいたしかたないことかもしれません。

農地を取得するには、それが賃貸であるか売買であるかに関わらず、申請前に具体的な農地特定しておく必要があります。そして、その農地を利用する計画を立て、それを農業委員会に申請し、その許可を得なければなりません。

繰り返しになりますが、農地を利用するためには、栽培する作物に関する適切な栽培技術を持っていることが求められることがあります。その技術を持っていない場合、農業委員会からは県立の農業大学校への入学を勧められることがあります。しかし、このような学校は一般的に全日制であり、兼業就農を考えている人にとっては事実上不可能です。千葉の場合には、農業大学校の倍率が高く、聞いた話ですと5倍だそうです。50代の方の入学は、ほぼ難しいと思われます。ただし、この技術要件に関しては、農地を借りた前耕作者から指導を受けるなどで解決できる場合もあります。

さらに、各市町村の農業委員会は、守旧の意識が強く残っていることから、新規就農者に対しては専業就農前提としていることが多く、二拠点での就農に対しては厳しい傾向があります。そのため、新規就農者が農業委員会の許可を得るためには、その要件を理解し、適切な申請が必要となります。

そして、就農時には通作距離が考慮されます。通作距離とは、住まいから農地までの距離のことです。大体の基準としては、片道1時間程度以内を求められます。都心から農地を探す場合、この距離基準により選択できる地域は限られてしまいます。また専業を前提とする古い考えの農業委員会は、それでも認めない場合もありますが、行政を変えれば、まったく問題ありませんので、根気よく気の合う農業委員会を探しましょう。

これらの事情を鑑みて、農業委員会の許可を得るためには、まず地域や委員会の要件を十分に理解し、それに見合った計画を策定し、適切な栽培技術を身につけることが必要です。また、地域との良好な関係性も重要で、就農する地域の生活環境や社会状況についても考慮することが求められます。地元の農家の方が就農に理解を示しているような場合には、農業委員会も好意的に受け止めてくれることも多々あります。

新規就農者が成功するためには、これらのハードルを乗り越えるための根気強い取り組みと、地域と連携しながら柔軟な対応が必要とされます。市町村の農業委員会と良好なコミュニケーションをとりながら、しっかりとした計画と準備を進めていくことが重要です。これに関しては、後の章で詳細に説明します。

 ポイント 

?農業委員会は、明らかに人や年齢を見ているように感じられる場合もありますので、向き不向きもあるかと思われます?いくつか面談を申し込んであたりを見るとよいでしょう??

認定新規就農者取得

認定新規就農者」とは、農業に新たに挑戦する人々を対象にした政府のプログラムの一つで、この認定を受けることにより様々な支援を受けることが可能になります。補助金融資といった具体的なメリットが与えられ、新たな農業経営をスムーズにスタートさせることを目指しています。

この認定は専業農家だけでなく、兼業農家対象となっています。つまり、本業を持ちつつ農業に挑戦する人々も、この認定を取得することで専業農家と同様の支援を受けられます。

認定新規就農者として認定を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。これには、農業経営計画の作成や面接が行われます。これらの条件を満たすことで、政府からの補助金や融資を受ける資格が与えられ、以後かなり有利的な環境で農業経営が開始できます。

補助金は、農業用機械の導入農地の改良施設の設置など、農業経営に必要なさまざまな費用に充てることができます。また、融資は低金利無利子で提供され、初期投資を大幅に軽減することが可能となります。

このような制度を活用することで、新規就農者はリスクを抑えつつ、農業経営を始めることができます。しかし、認定新規就農者としての認定を受けることは、それ自体が一つの挑戦でもあります。農業経営計画の作成や面接は、新規就農者にとっては大きなハードルとなることもあります。具体的な経営計画を作成することで、目標やビジョンを明確に設定することができます。

当校の持つ農事組合法人や当校の生徒の一部も兼業のまま、この申請を通すことを目指しています。ただやはり兼業就農のため、どうしても行政が協力的でないと通すことは難しいかもしれません。しかし要は、売上目標をどう達成するかということが主となっている訳ですから、先にある程度の売り上げを作ってから計画を改めて申請すれば、審査する側の行政も文句をいいづらいかと思っています。

認定の書類は、量も多く、書き方も複雑で、さらに面接なども行われるため、書くことが苦手な人には面倒な作業とはなりますが、改めて経営改善計画などを書類に落とすことで、全体の整理ができていくということも効果の一つです。できれば、兼業就農をはじめて、ある程度収益を作り、定年までには認定を受けられる状況を作りましょう。

 ポイント 

?兼業農家が認定新規就農者の資格を得ることは、?将来の独立に向けて、大きなアドバンテージです✨ ?今後、学校では取得がとりやすい環境を関係の行政書士などを交えて構成していく予定です?

兼業農家独自戦略

本業を続けながら50代農業を始めるという新しいキャリアパスを考えた場合、専業農家とは違う、兼業農家なりの独自戦略を考えることが必要です。専業農家と兼業農家の明らかな違いを検討して、何が重要なのかを考えていきましょう。

まずデメリットを見てみましょう。専業農家と比較すると、兼業農家は本業があるため、土日祝日しか時間がとれないという制約があります。これは、天候や季節に左右される農作業にとっては、大きなハードルとなります。また、初期投資としての機械などの購入難しい場合もあります。さらに、栽培技術がないという点で、初期はかなり苦労しそうです。

しかし、これらのデメリットを克服するためのメリットも兼業農家には存在します。まず本業があるために収益化までの時間的な余裕があります。これは、すぐに収益を上げる必要がない作物、例えば果樹の栽培チャレンジできるということです。特にオリーブのような作物は、すぐには収益化できないけれど数年後には高い収益性が得られ、その後継続します。詳細は省きますが、このような耕作放棄地で、それほどの手間がかからず、年数だけ経てば収益化できるような果樹はたくさんあります。

また、本業と農業の損益通算による節税効果があります。農業にかかる経費を本業の収益から差し引くことで、税金の負担を軽減する節税方法です。さらに、本業があることで、失敗が許容されるというメリットもあります。新しいことを試し、リスクを取ることが可能で、これが長期的な成功に繋がることになるでしょう。

また、サラリーマンとしての信用を背景に、ソーラーシェアリングなどの費用がかかる投資で融資を受けやすいという利点もあります。実は、このような投資を専業農家が受けるには与信力が低いから難しいということがありますが、50代の兼業農家であれば、サラリーマンとしての与信で融資を受けられるということです。

最後に、50代という豊富な社会経験を持って農業を始めることもメリットになります。人脈や知識を活用できるにもその一つです。ふるさと納税の際にも述べましたが、人脈を使って米を売ったり、蓄えた知識から新しいアイデアを今までの知識から生み出したりするようなことです。特に、現代の農業はIT技術が大きな役割を果たしています。高いITリテラシーを持つことは、効率的な農業経営における大きな強みとなります。また意外に日常の通勤時間のアイドルタイムにいろいろと読んだり、調べたりするのも専業農家にはない兼業農家独自の時間です。都会は図書館や本屋も多く、そこを活用できるということも新たな「里山年金」を作る契機となるでしょう。

このように、兼業農家には独自戦略は、明確なメリットとデメリットがあります。しかし、メリットを最大限に活用し、デメリットを克服することで、専業農家とは違う兼業農家独自の戦い方を展開していけばよいのです。

損益通算と節税

農業に従事することで兼業農家となり、税務署申告個人事業主としての立場になることができます。個人事業主となることで享受できる節税のメリットは大きく、十年単位で考えると数百万円節税効果が見込めます。実際には、税務署へ申請でするだけで個人事業主になることができ、家庭菜園で栽培した野菜を売るレベルでも申請は可能です。

個人事業主になれば、以前は経費化できなかった支出経費として認めることが可能となります。例えば、農業用具や機械の購入費用、肥料や種子のコスト、農地改良費用などが含まれます。

さらに、農業経営本業に関連する収入と支出を組み合わせて、所得税の計算を行う「損益通算」を活用することも可能です。これにより、農業事業における赤字分を本業の収入から控除でき、全体としての税負担を軽減できます。初期の投資が大きい農業経営においては、これは大きなメリットとなるでしょう。

また、自家用車事業用に使う場合、ガソリン代車検代修理代なども経費として計上することができます。さらに、ノートパソコンスマートフォンなど、事業運営に必要な機器の購入費用も経費として扱えます。旅行でも農業用視察であれば認められますし、配偶者が手伝ってくれるのであれば、専従者給与として86万円まで払うこともできます。

個人事業主となることで、税制面での利点を最大限に活用することは、経営の成功に向けた一歩と言えるでしょう。ただし、このメリットを享受するためには、適切な記録と計算、そして確定申告が必要となります。これには時間と労力が必要ですが、その成果は大きいと言えるでしょう。

個人事業主としての損益通算は、あなた自身の状況と目標を考慮し、適切な税務戦略を練ることが重要です。またこの機会に、源泉徴収で税金をあまり意識しなくてもよかったサラリーマン脳を改めるよい機会になるのではないかと思います。