いざ、日本農業実践学園へ!マツケン参場vol.6


5期・松健(54歳)

意識は農家。トウモロコシを移植!

茨城県水戸市にある日本農業実践学園は、1927年(昭和2年)に開校した私立農業専修学校だ。生徒は10歳代から50歳代で、経歴も目標もさまざま。学園長の籾山旭太さんは公式ウェブサイトで、「“自分の農業”を実践します。学生は皆それぞれ専用の畑があり、思い思いに作物を栽培します。できた野菜は食べることもできますし、直売所で販売することもできます。学園にいながら、意識は農家になっていきます」とメッセージを述べている。その、「学園にいながら、意識は農家になっていきます」という一文が、チバニアン兼業農学校の雰囲気と通じるところがあると感じられる。

僕たち生徒はズームの授業で、籾山さんから農業の「基本の基」を教わっている。遠く茨城の地からいつ自分が当てられるかとヒヤヒヤしながらも、植物の光合成の仕組みや土と肥料の関係など、もしかすると農業高校の1年生が学ぶような内容をていねいに教えてもらっている。そこで得た知識を実践する場としてある学園へ、千葉、東京、神奈川、埼玉など首都圏から車や電車で何時間もかけて向かうのだが、なかには学園の施設に前泊する生徒もいる。聞けば、エアコン完備で快適に過ごせるそうだ。

そんなチバニアンの生徒たちが、「おはようございます!」と学園に集合したのは2023年5月21日、そして1か月後の6月18日。今回のブログは、その2回の研修を前・後編に分けてレポートする。

まず向かったのは、トウモロコシの苗を植える畑。セルトレーの穴に1粒ずつ種を播き、ビニールハウスで2週間ほどかけて育てた苗を畑に移植する作業だ。セルトレーで育苗するメリットの一つは、欠株が出ないこと。欠株とは、畑に種を直播きした場合、すべての種が芽を出すとは限らず、芽を出さない種もある、それが欠株で、畝に苗がないスペースができてもったいない状態になる。それを避けるには1か所に2、3個の種を播き、確実に芽を出させるのだが、今度は出た芽を間引く作業が発生する。それも手間だ。つまり、スペースの無駄や間引く手間を省くためには、あらかじめセルトレーで育てた苗を移植すれば効率的だということ。それが、セルトレーのメリットだ。

畑では、元肥を播くグループと、マルチャーという機械で畝を立てながらマルチを張るグループ、そこにトウモロコシの苗を植え付けていくグループに分かれて作業が行われた(みんな「やりたがり」なので、結局は全員が交替しながらすべての作業を経験するのだが)。僕は苗の移植を体験しようと男性生徒とペアを組んだ。僕がセルトレーを腕に抱え、男性生徒が「なかよしくん」という筒状になった移植機を操り、植え付けていく。まず、男性生徒がなかよしくんの先端をマルチに刺す。ハンドルを握ると、なかよしくんの先端が開き、マルチ内の土が少し掘られる。そこで僕がすかさずセルトレーから苗を取り出し、なかよしくんの筒に放り込む。苗は筒を通って土の上に落ち、なかよしくんを引き抜くと、落ちた苗の根に土がかぶさり、移植完了という流れだ。横に移動し、なきょしくんをマルチに刺して、苗を放り込んで、引き抜く。数十メートル先に見える畝の端までそれをひたすら繰り返す。まるで餅つきのように2人の呼吸を合わせながら、刺して、放り込んで、引き抜く。機械の名前のとおり、なかよしでないとできない作業だ。あるいは、この作業をするとなかよしになれるのか。これ以上ないネーミングに感心しながら畝の端まで植え付けた。

ちなみに、品種はゴールドラッシュ。同じ時期に一斉に実をつけるので、播種の時期をずらして育てると収穫が分散され、長く出荷できる。もう一つちなみに、張ったマルチは生分解性のマルチだそうだ。回収作業が不要で、そのまま土にすき込むと微生物によって水と二酸化炭素に分解される。有機農業を目指す生徒にはぜひ使ってほしいマルチだが、通常のマルチの数倍の値段なのでお財布くんとご相談を。

サツマイモ、どう売る?

この時期、学園の圃場のいたるところにサツマイモが植えられている。その中で、僕らが向かったのは校舎から歩いて5分ほどのところにある道路沿いの1ヘクタールの畑で、全面にサツマイモが植えられていた。長さ数十メートルある畝が何十列も整然と並んだ様子を目にすると、思わず「きれいだなあ。畝立て機ほしいなあ」と、ため息まじりの言葉がもれる。畑に入ると籾山さんが、「サツマイモの植え付け方には、大小さまざまなイモが採れる直立植えと、同じくらいの大きさのイモが採れる水平植えがあります。斜め植えという方法もあります」と植え方を教えてくれた。マルチの上を転がすだけで等間隔に穴を開けられる道具、通称「コロコロ」で植え付け用の穴を開け、そこに苗の2、3節を土の中に埋め込む水平植えで植えていった。

最近、流行っているという「モグラ植え」という植え方も見せてくれた。マルチに直方体の穴を開け、その壁に苗を差し込むように水平植えで植え付ける。苗をマルチの中に入れ込むようにすれば日照りや霜のストレスが減るが、「マルチを破く面積が広いので、雑草が生えやすくなります」と籾山さんはモグラ植えのメリットとデメリットを説明した。

ちなみに、学園ではサツマイモの苗もつくっている。収穫したサツマイモの一部を種芋として、10度以下にならないよう貯蔵し、3月に植えて出た苗を5、6月に定植する。「苗はいま1本30円くらいで売っていて、それなりに商売になります」と余裕があれば苗を自分でつくったり、売ったりすることも勧めていた。

授業が終わると、学園が運営している直売所に行き、生徒全員でアイスクリームを食べた。トッピングはサツマイモのペースト。こってりとしていて、冷たいアイスにぴったりだった。いま、チバニアン兼業農学校の圃場で有志チームがサツマイモを育て、「できれば商品化して売りたいね」という話になっているが、定番の干しいもや冷凍焼き芋、サツマイモペーストなど、サツマイモの商品は出尽くしていると言っていいほどたくさんある。メンバーは頭を捻り、どうすれば売れるのか思案を重ねている。(5期生マツケン)

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