今日、マガモにしない?マツケン参場vol.1


5期・松健(54歳)

「趣味・カモ猟助手」の1日

猟期になると朝4時に起き、東京から千葉や神奈川に狩猟へ出かける知人についていって、カモ猟の助手をするのが僕の趣味だ。僕というのは5期生の生徒、松井健太郎のこと。僕は狩猟免許(銃)を持っていないので銃は触れないが、助手席から双眼鏡を覗いて池や川に潜むカモを探し、「いる。マガモのオスだ!」とカモを見つけたら、それを知人がどうやって撃つか、一緒に作戦を練ったりする。作戦が決まったら知人は車から降り、人家や人の有無を確認し、足音を忍ばせ、風向きを読み、低く構えてマガモに銃口を向ける。スコープを覗き、呼吸を整え、一瞬の静寂が訪れる。僕はうしろから双眼鏡でマガモの様子を食い入るように見ている。「このマガモ、死ぬんだ…」という思いが頭をよぎった途端、「パシューン!」と空気銃の発射音が池に響く。1発、2発。頭に弾を食らったマガモは暴れ、羽をばたつかせ、必死で茂みに隠れようとするが、3発目が胸に当たり、その場でコクリと首を水中に垂れた。
「よし。留まった」

さあ、マガモの回収作業だ。僕は急いで車に積んだサップを降ろし、空気を入れて、池に浮かべる。マガモが生き返らないように見張っていた知人がそれに乗り、オールを漕いで、首をたれて血を流すマガモのそばまで近づき、網ですくって、「獲ったどー!」

日の出から日の入りまで、それを繰り返す。昼食を食べるのも忘れて池をめぐることもしばしばだ。マガモ、カルガモ、コガモ、ホシハジロ、キジバト…。いろんなカモや野鳥が獲れる。日が沈んで、暗くなった池の畔に車を止め、ヘッドランプの灯りを頼りに腸を抜き、羽をむしり、「食べ物」に変わったカモを保冷バッグへ入れて、東京へ戻る。それが、「趣味・カモ猟の助手」の1日だ。

農家になって鳥獣害を実感する

その趣味にハマって4年。千葉のいろんな池にカモ猟助手として出かけると、鳥獣害を防ごうとする農家さんの努力をあちらこちらで目にする。池の畔や田畑の脇にはイノシシを捕える箱わなが設置され、シカやイノシシよけの電気柵も張りめぐらされている。知人はカモだけでなく、狩猟団体に属してシカやイノシシ猟も行っているので鳥獣害や狩猟の現場について詳しい。農家さんに頼まれ、ミカン畑でミカンをついばむヒヨドリを撃ったり、養鶏場の産みたて卵を狙うカラスを撃ったりすることもある。ちなみに、カラスの肉はかなり美味い。

鳥獣害が強く言われるようになったのは20年前頃からだろうか。その理由は、動物の隠れ場所となる耕作放棄地や空き家が増えたから、畑に収穫しない野菜や果物を放置しているから、地球温暖化で冬を越しやすく幼獣の死亡率が下がったから、ハンターの高齢化や減少などさまざまあるが、田舎や中山間地域の人口減少がさらに進むと、その傾向はますます強まりそうだ。僕はまだ農地を取得したり、作物を栽培したりしていないので鳥獣害を実感していないが、雑誌などの取材で農村を訪れると、必ずと言っていいほど鳥獣害の話題を耳にする。先日、「チバニアン兼業農学校」の生徒さんがつくったシカやイノシシよけの竹製の柵を見て「すごいな」と感心したが、農家を目指す僕にとっても鳥獣害はけっして他人事ではない日が来るに違いないと思った。

ジビエをもっと気軽に食べたい

もう一つ。わなや銃でシカやイノシシを駆除しても、それを「食べる」までの道のりが遠いのも現状だ。僕はカモ猟の助手をしているが、仕留めたカモは必ず「食べる」というルールを設けている。食べるために助手をしている。残念ながら半矢(撃った弾が急所以外に当たってしまい、傷を負ったまま逃げられること)になって、池のどこかにカモが隠れてしまったときは、日が沈むまで探す。その日に見つからなければ翌日、同じ池に行ってもう一度探す。それほどカモの回収作業には執着しているつもりだ。

しかし、シカやイノシシを狩る狩猟者のなかには、狩ることだけが目的となって、仕留めたシカやイノシシは埋めたり、燃やしたりして、尻尾だけ役所に持っていき、駆除報酬をもらう人もいる。それを否定はしないが、取った命を「食べる」ことは同じ生き物としてマストではないか。「いただきます。マガモが僕になる」と僕は手を合わせ、シュクメルリに姿を変えたマガモをほおばっている。

駆除されたシカやイノシシは、その多くが廃棄処分され、食肉として流通するに至っていない。それには理由があって、「間伐材と同様、道がない限り山から下ろすのが大変」「わな猟は適切な場所に設置すればそれなりに獲れるが、巻狩は流通させるほど獲れない」「食肉処理施設が足りていない。仕留めてから1?3時間ほどで持ち込まないといけない」「そもそもジビエ料理はそれほど人気ではない」といろいろ。ジビエ料理店はちょくちょく目にするが、「ジビエは臭い。堅い。美味しくない」というイメージを持つ人も少なくない。上手に血抜き処理すればとっても美味しいのに。

シカもイノシシもカモも安定供給は簡単ではないので、「今日、ケンタッキーにしない?」という気軽さで食べることは難しいが、農家さんがわなを仕掛け、近くの農家レストランで美味しく、リーズナブルにジビエ料理が食べられるようになればうれしいな。(5期生/松井)

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