日本農業実践学園へ!マツケン参場vol.7


5期・松健(54歳)

落花生の畑づくりと間引き

落花生の語源を知っていますか? 籾山さんから聞いて「へー!」と驚いた。苗が成長して、枝葉を広げ、黄色い花が咲く。その「花」が「落」ちた後、残った子房が伸びて土の中に潜り、実が「生」るので、落花生。「へー!」でしょ? そんな落花生の種まきですが、まず、種に忌避剤をコーティング。忌避剤をつけずに蒔くと、カラスにつつかれてなくなってしまうとか。カラスは落花生が大好きなのだ。種を容器に入れ、ドロッとした真っ赤な忌避剤をかけ、撹拌して均等にコーティング。シートの上に広げて乾かす。これを蒔くと、カラスは嫌がって食べないそうだ。

種を乾かしている間に畑の準備を行った。整地された畑に、苦土石灰と、堆肥と腐植酸入りの肥料を蒔く。25a(2.5反)の畑に、苦土石灰は20キログラム入りを6袋蒔くので、畑を縦に6等分して6人で蒔く。肥料は、畑を横に8等分して8人で蒔く。たくさんの肥料を広い畑に均等に蒔くための工夫だ。

蒔き終わったら、畑を耕す。トラクターの出番だ。生徒みんなの憧れの機械であるトラクターを、教員に教えてもらいながら順番に操作。曲がりながらもうまく耕し、幅90センチ×高さ10センチほどの畝を立てていった。生まれて初めてトラクターに乗った女性生徒は、「タイヤが土に取られて、まっすぐに前進させるのが意外と難しかったです。でも楽しかった」と笑顔で話した。

耕してできた畝には、生徒が順番にマルチャーを操作し、穴あきマルチを張っていった。手でマルチを張るのは大変な作業だが、機械があれば簡単。きれいに張られたマルチの穴に1粒ずつ、カラスよけのコーティングが施された赤い種を撒いていった。

そして、1か月後。

生徒たちが撒いた落花生、オオマサリとキューナッツの種は順調に育ち、20センチほどの苗になっていた。株元や畝間に小さな雑草が生えているので、それを叩く(茨城弁だろうか。籾山さんはそう言う。たぶん抜くという意味)作業を行った。株元の草は手で抜き、畝間の草はホーという長い棒の先に平たい鉄がついた道具で根こそぎ叩いていく。加えて、機械も登場。畝の長さは何十メートルもあり、手作業だけでは大変なので、管理機で雑草を土にすき込んでいった。「花が咲いたらマルチを剥がしますが、雑草との競争になるので、草が小さいうちに叩いておくことが大事。梅雨時期は雨が多く、畑に行く回数も減りがちになりますが、その隙に雑草が生い茂ります。6月に手を抜くと夏に草取りに追われるので、いまのうちに叩いておくことが大事です」と、籾山さんは6月の草取りの重要性を説いた。

オオマサリは思いの外たくさんの種が芽吹き、苗まで育ったので、2苗に1苗を間引くことになった。成長すると枝が横に広がるので、隣の苗との間隔を開ける必要もあるそうだ。スコップで1苗ずつ間引いていった。間引いた苗を捨てるのはもったいないので、欲しい人は持ち帰れるようにポットに植え替えていった。ある生徒によれば、「オオマサリの苗は1本500円で売っていた」とのこと。かなりの数を間引いたので、金額にすればそれ相当の額になる。僕も10本ほどもらって帰った。黄色い花が落ちて、土の中に実が生る様子を見てみたかったから。

収穫した落花生は乾燥させ、脱粒機にかけて選別し、A品、B品、ゴミに分けられる。脱粒機がなければ、唐箕(とうみ)で選別することもできる。生徒たちが、資料館に陳列されているような昔の木製の唐箕を想像していると、「今はステンレス製の唐箕が売っていますので」と笑って話す籾山さん。落花生の一般的な相場は、キロ当たり500円ほど。この畑で1トン採れるとすると50万円。業者に卸さず直売所などで自分で販売すれば、目標は100万円になる。千葉県木更津市に「鈴市商店」という落花生専門店があり、生の落花生を少量からでも焙煎加工してくれるそうだ。落花生の栽培、そして販売にも挑戦してみては?

話題のシャインマスカット

学園の敷地内にあるビニールハウスの一つでシャインマスカットを栽培し、販売するのは、「まごころ果樹園」の園長、田崎哲也さんだ。学園の卒業生で、建築関係の仕事からブドウ農家に転身して4年。高級ブドウとして人気急上昇中のシャインマスカットをおいしく育てることに成功している。「2年目から少しずつ収穫できるようになり、去年から収量が増えてきました。今はキロ当たり5500円で、直売所を中心に東京や神奈川でも販売しています」と話す。「たとえばこの6メートルほどの枝が3本伸びた木には、150房くらい実ります」とのこと。ハウスで栽培しているのは、ブドウが雨や病気に弱いから。露地でも栽培は可能だが、天候の影響を受けて高品質のブドウを育てにくくなるから。シャインマスカットの根は幹の元のマウンドに集まるので、そこに養分や水を与えている。水は自動潅水システムを利用している。

「枝はどうやって伸ばしていくのですか?」という生徒の質問に、「単に伸ばすのではなく、ある程度伸ばしたら、摘心して成長を止め、また伸ばして摘心して、と繰り返すことで木の中身が充実します。また、先端を止めると副梢の勢いが出るので、それを伸ばしたりもします」と答えた。また、接ぎ木に関して質問されると、「この木は、台木は野生のブドウで、上がナガノパープルです」。病気に強い野生の木に、商品価値の高い品種の木を接ぎ木するとのこと。生徒たちは興味津々だ。室温の高いハウス内で首筋に汗をにじませながら、時間を忘れて説明に耳を傾けていた。

ビニールハウス解体!

倉庫として使っていた奥行き5メートルほどのビニールハウスの解体を行った。「解体を経験しておけば、立てるときもイメージしやすいでしょうから」と籾山さん。まずは、押さえのゴムや金具を外し、覆っているテントを外した。外したテントは小さく畳んでおく。

骨組みだけになったところで、パイプをつないでいる留め金を金槌で叩きながら取り外す。高い部分は脚立を置いて上り、慎重に取り外す。全体を支えている脚の部分は地中に埋まっているので、みんなで力を合わせて、「せーの!」で引っ張り上げた。

この日は30名ほどの生徒が参加していたので、「1人でやれば半日かな」と籾山さんが言う解体作業も、あっという間に終わらせることができた。ちなみに、ビニールハウスの相場は50メートルで100万円ほどだそう。栽培したい作物や予算に合わせて、最初は小さなハウスを1棟、立ててみるのもいいかもしれない。半日、いや、僕なら丸3日はかかるだろうけど。

ブルーベリーの可能性

学園が運営する直売所の近くにブルーベリー農園がある。着花率を高めるためにいろいろな品種の木を植えている。剪定と草刈り、そして、防鳥ネットを張っておけば管理としてはだいたいOKとのこと。ただ、支柱を立てて園の側面と上部にネットを張りめぐらせるのは容易ではないと思ったのは僕だけだろうか。

千葉県でもブルーベリー栽培は人気だが、「経営的に成功しているのは摘み取り体験などを行っている観光農園が多そうです」と籾山さん。その言葉の意味がわかったのは、摘み取り体験を終えた後。10センチ四方のプラスチック容器にブルーベリーの実を満杯詰めるのに20分ほどかかった。一房の中で成長がまちまちな実から熟した大きな実だけを選んでひと粒ずつ採るのは大変だった。学園の直売所で同じ量のブルーベリーが500円で販売されていたことからすると、1時間で1500円。1日7時間、汗だくになって摘んでも1万500円。経費を引くと利益はいくら残せるのか…と考えると、「入園料をいただきつつ、来園者に楽しく摘み取ってもらうのがいちばん効率的です」という籾山さんの言葉に、大きくうなずかざるを得なかった。ただ、「6月に出荷できる作物があるのは意味のあること。年間を通して常に出荷できる作物があるかというのも農業経営のポイントですから」という籾山さんの言葉にも、「なるほど」とうなずいている僕でした。それにしても、甘くてジューシーなブルーベリーでした。来月の研修も楽しみだ。(5期生マツケン)

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