生徒インタビュー(番外編)・節税授業講師・川合 淳一さん

自らも兼業農家として、節税対策をレクチャー

チバニアン兼業農学校で兼業農家のための税対策の講師を務めている川合淳一さん。千葉県南房総市に住まいと農地を持ち、館山市で税理士事務所を経営しながら、「すぎな舎」という屋号で行っている養鶏業や、米農家としても収入を得ている兼業農家だ。「鶏は約400羽飼っています。もみじという日本産の品種で、鶏舎で平飼いし、有精卵を出荷しています」と川合さん。卵の半分ほどは神奈川県の生協に、半分は楽天市場やレストラン、個人のお客に販売。生協以外は10個650円で卸している。

「おかげさまで売れてはいますが、収支はトントンかな」とのこと。「3年前に黒字化できたのですが、コロナ禍やロシアとウクライナの戦争によって飼料代が高騰したことでダメージを受けています」。安全でおいしい卵づくりにこだわっているため、トウモロコシと魚粉、牡蠣殻、米ぬかを独自の配分で混ぜてつくる飼料は、卵1個につき20円もかかっている。「ただ、お仕事をいただいているお礼として、卵をお歳暮などでクライアントに贈ると喜ばれます」と笑顔。顧客のハートと胃袋をガッチリとつかむツールとして役立っているようだ。

鶏は動物なので、毎日世話をしなければいけない。そのため、休日を取ることが難しくなる。「1、2日なら養鶏仲間に鶏の世話をお願いすることもできるのですが、3、4日になると出荷が絡んでくるので、そこまではお願いできません。だから、長期の家族旅行に出かけられないというのが悩みの種です」と苦笑いを浮かべる。

米は、5反の田んぼで無農薬栽培でコシヒカリを作っている。鶏舎から出る鶏糞も堆肥として活用。有機的に育てられた米はおいしく、今は個別販売で売り切っている。「米を作る本当の目的は、何かあったときに家族の食べものをキープしておきたいから。自然災害や戦争などによって食料安全保障が脅かされたときのための備えとして」と話す。

南房総の地で、税理士として、農家として、多忙な日々を送っている川合さんだが、生まれ育ったのは千葉市だ。市内の会計事務所に勤めていたが、「豊かな自然のなかで自給自足的な生活を送りたい」と思うようになり、退職。30歳のときに知り合いの伝で南房総市に移住した。畑を借り、アルバイトをしながら1年間過ごした後、農家レストラン「百姓屋敷じろえむ」で研修をスタート。養鶏や稲作などを学ぶなかで、「百姓屋敷じろえむ」に卵を出荷していた養鶏農家が引退すると聞き、川合さんが引き継ぐことにしたそうだ。家も農地もまとめて買い取り、家はDIYをしてつくり直した。10年近くが経った今、そこで家族と暮らしている。

そんなある日、「突然平山校長からお電話をいただき、兼業農業者の税対策を教えるオンライン授業の講師をしてほしいとのオファーを受けました」と川合さんは講師になった経緯を話す。兼業農学校というコンセプトがユニークだと感じ、講師を引き受けた川合さん。「農家節税」という講義名で期に2回行われる授業では、会社員、あるいは公務員やフリーランスとしての確定申告や消費税、節税対策について生徒に有益なアドバイスを行っている。

「生徒の皆さんが税金に興味を持ち、農業に挑戦するだけでなく、農業経営をするんだという思いが強く伝わってきます」と授業を行った感想を述べる川合さん。「よく受ける質問は、どこまで経費として計上できるか。農業にかかった費用を明確に計上することは兼業農家の節税対策のポイントで、給与所得が高ければ、損益通算(農業所得の赤字分と給与所得の黒字分を相殺)することによって、いくらか還付金を受けられる場合もあります」と耳寄りな節税対策をレクチャーしてくれる。「ただし、何年間も続けて農業収入を赤字で確定申告していると、事業として成り立っていないと見られ、税務署のチェックが厳しくなる恐れもあります」と注意を促すことも忘れない。

節税対策の授業を受けた生徒のなかには、川合さんに確定申告を依頼している人もいるそうだ。確定申告は会社員や公務員には経験が少ないため、専門家に依頼すると安心だ。大型農業機械を購入した生徒は、数十万円の還付金を得られたそうだ。「生活を支えられるほどの農業収入を得ている生徒さんはまだおられないようですが、数年後にはそれなりの規模の農家になっている方もおられるはず。所得税や消費税の知識や対策は必要になるので、早いうちから学び、実践されることをおすすめします」と呼びかけた。そして、「税金だけでなく、カリキュラムには農家になるための知識がたくさん織り込まれています。拠点のある睦沢町では農地を取得しやすい環境が設けられているので、小規模兼業農家から始め、仲間とともに夢を実現してほしいですね」と、チバニアン兼業農学校の入学を検討している読者にメッセージを送った。

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