6次産業化を複雑に考えない

農業の6次産業化とは?

農業の6次産業化とは、単に農作物を生産するだけではなく、加工や販売、観光、教育などのサービスを組み合わせることで、農業の価値を高め、地域経済を活性化させる取り組みです。この概念は、生産(1次)、加工(2次)、販売(3次)の領域を統合し、農産物の付加価値を最大化することを目指しています。

例えば、ある農家がイチゴを栽培しているとします。6次産業化のアプローチでは、このイチゴをただ販売するだけでなく、イチゴジャムやデザートなどの加工品を作り、レストランやカフェで提供することも考えられます。さらに、イチゴ狩り体験や農業教室を開催し、消費者が農場を訪れる機会を提供することで、農産物への関心を高め、地域の観光資源としても機能させることができます。

このように、6次産業化は農業を多角的に展開させ、農産物のブランド化や地域の特色を生かした商品開発を可能にします。また、農業に新たな価値を加えることで、若者や新規参入者の参入を促し、地域経済の持続可能な成長を支える重要な役割を果たしています。

6次産業化という名称で複雑になってしまう

前段のような説明が、6次産業化となります。商売的に考えると、野菜等の一次産品をそのまま販売しても、単価が低いため、あまり儲けがなく、それを加工やサービスを付加して販売することにより、収益性を高めるということが一連の流れとなると考えます。これは農業自体が、儲かりづらいという反省から成り立っていますが、高齢化に苦しむ業界にとっては、現実的に何をやればよいかわからないという点も否めません。

ただし違う側面から見れば、儲からないから6次産業化して、収益を上げるということですから、もともと収益性が高いものを作れば、そのままでいい、もしくは更に収益性が向上するという見方もあります。例えば、わが校では専業農家がやりづらい、収益性が高いけれど年季がかかる果樹や薬草などを推奨しています。専業農家だと5年後にようやく収益が始めるような作物では、干上がってしまいますが、本職のある兼業農家であれば、十分に待つことができます。むしろ一般の野菜栽培では、機械、労働力がある専業農家と同じ土俵に上がることもできないでしょう。

兼業農家と6次産業化

また専業農家の立場としては、6次産業化が理想とはわかりながらも、通常の栽培などで忙しく、その時間や人員、販促のスキルなどが足りないという問題もあります。日々農作業を勤しみ、疲れた体で家に戻って、SNSに投稿したり、記事を書いたりということができるのは一握りのスーパーマンだけになるでしょう。また月十数万の収益増では、職業として、労力の割に収益性が高くなったとはいえないかもしれません。

一方で、兼業農家は週末祝日と使える時間は限られていますが、この時間は実は、一般社会の人の休みと被っているという側面もあります。千葉においても土日祝日は、多くの行楽客で道の駅は賑わい、とても有利な環境です。この限られた期間において、道の駅に野菜を出荷したり、出店を出したりすることで、収益性を高めることができるでしょう。月十数万の収益増は、本職がある兼業農家にとっては十分な収益ということもできるでしょう。

いま、学校が実験的に行っているのは、日本のカレー専用の米の稲作や道の駅での販売を目指したポップコーン用のとうもろこしの栽培です。華麗米は収量こそ、少ないのですがキロあたりの単価は、一般の米より4倍ほど高く、人気もあるようです。またポップコーンもそのまま原材料で販売しても収益はあがりませんが、出店で販売すると数十倍の収益になることを見込んでいます。

他にも様々な方法で、兼業農家が限られた時間、投資でどこまで収益性を6次産業化で高めることができるかということを研究していきたいと考えています。

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