季刊地域 春号(57号) 農地を守る

季刊地域 春号(57号) 農地を守る

農文協から発行される季刊地域「農地を守る」の最新号が、農業と農地利用の将来に向けた重要な論点を提供しています。特に焦点を当てられているのは、下限面積の廃止により農地取得が容易になり、それが新規就農者にとっての追い風になるという事実です。この変更は、農業人口の減少が進む中で、多くの希望を持って農業を始めたいと考えている人々にとって、大きなチャンスを意味しています。農地取得のハードルが下がることで、新しいアイデアや技術を農業に取り入れようとする人々が増え、農業の多様化と革新が促進されるでしょう。

さらに、放棄された農地の有効活用に関する提案も魅力的です。ヘーゼルナッツ、ダッタンソバ、ヨモギなど、従来の農業では考慮されなかった作物が紹介されており、これらがいかにして地域特有の資源として価値を生み出すかが説かれています。こうした作物は、比較的少ない手間で栽培でき、農業の新たな可能性を開くと同時に、放棄地を再び生産的な農地へと変貌させる潜在力を秘めています。これは、地域経済の活性化にも寄与する可能性があります。

また、最適土地利用総合対策の紹介は、将来の農業戦略を練る上で非常に有益です。農地をいかに効率的に、かつ持続可能に利用していくかについての具体的な提案がなされており、地域ごとの特性を活かした農業のあり方を模索する良いきっかけになります。これらの対策は、農地の価値を最大化し、地域社会における農業の役割を再定義する上で欠かせないものです。

最後に、農業人口の減少は否応なしに直面する課題であり、今後10年で100万人を下回る可能性があります。このような状況の中で、農地の最大活用は私たちの前に立ちはだかる大きな課題です。季刊誌「農地を守る」は、これらの課題に対する理解を深め、それに対処するための具体的なアプローチを提供しています。農業と農地利用に関する新しい視点と解決策を提示することで、農業の未来を前向きに考えるきっかけを提供してくれる貴重な資料です。

本の概要

遊休農地の活用策を探るシリーズの第3弾。「誰が?」では、下限面積が廃止になった影響を検証。これまで農地を持たなかった人が小さい畑を取得する動きが各地で生まれている。農家も農地も減少しているが、兼業・多業による小さい農業が新しい「農型社会」をつくる事例を。「なにで?」は農地の粗放利用に向く品目を取り上げた。注目はヘーゼルナッツ。「どうやって?」コーナーでは、使い切れない農地を地域で活かすために使える制度・仕組みを取り上げた。

季刊地域(57号)目次


 今号の撮っておき!「中干し延長」にやっぱり違和感
【特集】
「使い切れない農地」活用 part3
 農地を守る 誰が? 何で? どうやって?
 誰が? たとえば下限面積廃止でどうなった?
 狭い農地はこの町の農業の強みだった! 広島県熊野町 農業委員会事務局 内田直人
 なにで? たとえばこの品目で粗放利用
 ヘーゼルナッツ 寒さに強く栽培が簡単 長野県長野市・岡田浩史さん、晃治さん
 ダッタンソバ 耕作放棄地326haで有機栽培 神門 石井弘道
 イタドリ 高齢でもできる 休耕田1.3haを活用 高知県中土佐町 戸田晴喜
 ヨモギ 山形県鮭川村 長田邦彦 26/JAえちご上越営農部販売課 後藤直行
 ボタンボウフウ 香々地べジファーム 渕秀幸
 オオシマザクラ 京都よさの百商一気 小長谷健
 ヒツジ 岩手県花巻市・ひつじ農園はなまき
 どうやって? 人と農地のための仕組み・制度を活かす
 農村RMO 中山間直接支払 農家以外を巻き込む 貸し農園と地域運営組織 愛媛県東温市奥松瀬川地区
 最適土地利用総合対策 力作のジオラマで始まった新事業 長野県松川町大沢地区
 養蜂農家と連携 使い切れない農地を蜜源に 鹿児島県枕崎市田布川地区
 地域まるっと中間管理方式 不在地主問題に先手、これは農地と地域を守る手段 鳥取県日南町 糸田川啓
 兵庫いきいき農地バンク 集落まるごと農地バンクへ 兵庫県丹波市 竹内真泰
 相続登記の義務化 恐れるに足らず 司法書士 鈴木慎太郎
 所有者不明農地の活用法
【もの申す】
 スマート農業をアグロエコロジーからみると カリフォルニア大学サンタクルーズ校 村本穣司
 非現実的な「原発3倍」宣言 温暖化対策にはなりえない 東北大学教授 明日香壽川
【集落】
 むらの足 小さな稼ぎと合わせ技! 毎月定額乗り合いタクシー 井田屋 板倉満幸
 補助金を利用した移動支援がやりやすくなった 全国移動サービスネットワーク 伊藤みどり
 川谷もよりのビジョンづくり② 新潟県上越市 鴫谷幸彦
 新連載 空き家のミカタ① 神山町移住交流支援センター 吉田涼子
 ご当地おもしろスポーツ② ゲッター・木ッター・立ッター
【農】
 集落営農も 有機で元気になる!
 移住者6人が担う 有機農業でツルも子供も増やす ファームつるの里 森次高志
 懐かしくてうれしい生きものの多様性 橋波アグリサンシャイン 三島大地
 総面積約100haで有機農業 ファーム広瀬 庭本久則
 新連載 地方で挑戦するあなたへ 地域マーケティング講座① くつろぎたいのも山々 猪原有紀子
 新連載 唄は農につれ農は唄につれ① ノンフィクション作家 前田和男
【防災】
 岩手県初の田んぼダム235ha、四つのパターンから選ぶ 岩手県紫波町・水分上地区環境保全活動組織
【山・里山】
 私たちイチから山づくり始めます 境界確認をやってみた 愛知県岡崎市 加藤隆人
 山の資源状況がつかめる「航空レーザデータ」 奏林舎 唐澤晋平
 流通を変え、稼げる山づくりを実現 木材コーディネーターに注目だ ウッズ・能口秀一さん
【連載】
 地撮り!27 廃校利用のキャンプ場が人気
 『季刊地域』ホームページがリニューアル
 田舎カフェ10 季節ごとに変わる畑を眺める 青森県八戸市 川村久美
 ゆるくらジャーナル 本・映画 輝く図書館 読者の声

解説(詳細)

農家の高齢化や減少により増える遊休農地の活用策を探るシリーズの第3弾です。「誰が?」では、1年前の農地法改正で農地を新規に取得する際の最低面積基準(下限面積)が廃止になった影響を検証しました。これまで農地を持たなかった人が小さい畑を取得する動きが各地で生まれています。農水省が8割の農地を担い手に集積するという政策を進めた結果、農家も農地も減少していますが、兼業・多業による小さい農業が新しい「農型社会」をつくります。

「なにで?」は農地の粗放利用に向く品目を取り上げています。注目はヘーゼルナッツ。近年、輸入量が急増しているヘーゼルナッツを、遊休農地を活かして生産・販売する動きが長野の積雪地帯から全国に拡大中です。

「どうやって?」コーナーでは、使い切れない農地を地域で活かすために使える制度・仕組みを取り上げました。また、この4月から施行になる「相続登記義務化」について特集内で詳しく解説しています。

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