オリーブ栽培はポットで育てる!


5期・松健(54歳)

ポット栽培のメリット

今、チバニアン兼業農学校ではオリーブ栽培に熱い視線が注がれている。オリーブ関連の授業が開かれると生徒の参加数がぐんと増える。5期生だけでなく、それまでの期生も参加する。2023年6月4日に千葉県睦沢町のチバニアン兼業農学校の圃場で開かれた「オリーブポット研修」にも40名ほどの生徒が参加した。

なぜ、オリーブが注目を浴びているのか。理由の一つは、授業の名前にも記されているように、オリーブを地面に直接植える地植えで育てるのではなく、「ポット(鉢)」を使って栽培することを平山校長が提唱しているからだ。オリーブをポットで栽培? どういうこと?  「東京オリーブ」のプロデューサーで、チバニアンの教員である谷山也晃さんがポット栽培について教えてくれた。谷山さんは2018年からオリーブ事業に参入し、翌年には自らもオリーブ農園を経営する果樹農家となった人で、オリーブの原産国とされるトルコからゲムリックという品種の苗木を10万本、輸入する契約を交わし、すでに5万5000本を輸入し、熊本県と千葉県君津市にある7町歩の農園で栽培している。

「一般的にオリーブは畑に地植えして育てるイメージがあると思います。私の農園も地植えで育てていますが、平山校長の提案を受け、ポット栽培も可能だ再認識しました。可能どころか、地植えにないメリットがたくさんあることにも気づきました。一つは、移動できること。オリーブ栽培は日照時間が重要です。日本は山のふもとに農地がある場合が多く、季節によってはオリーブ畑が山の影に入ってしまうこともありますが、ポット栽培だと日が当たる場所へ移動させることができます。また、兼業で週末にだけ畑に通う省力栽培という点でポットが地植えに勝るのは、雑草が生えにくいこと」と谷山さん。「地植えしたオリーブ農園の仕事の4割は草取りです。その労力がポット栽培では省けます。雑草が生えないということは害虫も寄りつきにくいということです」。なるほど、一石二鳥ということか。

注目を浴びるもう一つの理由は、葉っぱ。「オリーブ製品といえばオリーブオイルを連想されると思いますが、オリーブオイルだけで事業の採算を取るのは正直、難しいです。そこで私が力を入れているのは、オリーブの葉っぱです」。同じゲムリックの木を、栽培方法を変えて実も葉も収穫しているそうだ。「オリーブの葉っぱからお茶、ビール、クラフトコーラ、スパイス、カレー、化粧品、サプリメントなど試作段階のものも含めてさまざまな加工品をつくって販売しています」と、谷山さんは自身の事業を説明する。葉っぱをパウダーにすれば、いろいろな商品に応用が効くそうだ。「もし皆さんがオリーブの葉っぱの栽培を始められ、ご自身で販路を切り拓いて販売し、それでも捌ききれなかった葉っぱがあれば、私の会社で買い取ります。営農計画書にそう書いていただいても構いません。安くはなりますがライフラインだと思ってお売りください。葉っぱは3年目ぐらいの木から採れ始めます」と呼びかける谷山さんの心強い一言で、葉っぱの栽培に心が傾いた生徒も多かったに違いない。

水やりと剪定で大きく育て!

そんな魅力にあふれたオリーブの苗木を、ポットに植え替える作業を行った。ルートプラスポットという、根巻きを起こさない特殊な形状をしたプラスチックポットを組み立て、植え替えた。根巻きとは、ポットなど育苗容器の壁面に沿って根がびっしりと張ることで、生育が止まったり、収量の低下の原因になったりする。ルートプラスポットは根巻きを防ぎ、新しい根が出やすくするために、壁面にボコボコした突起の加工が施されている。突起の先端には小さな穴が開いているので、空気と水の流れもいいそうだ。組み立てたポットにオリーブ栽培用の培養土を入れ、苗木を移し、さらに培養土を根元の高さまで入れる。苗は1年3か月ほど経ったもので、高さは約40センチ、直径は約1.5センチ。トルコから輸入され、福岡県の植木屋さんで10か月間ほど管理されていた。根元までしっかり土を被せたら、たっぷりと水をやって、植え替えは完了。

書き忘れたが、オリーブのポット栽培のデメリットが一つあった。それは、水やり。ポット栽培は土が乾きやすいので、こまめな水やりが必要になる。適度に雨が降ればいいのだが、日照りが続くと危ないことに。週末農業で難しいのがいかに水やりを行うかだが、「雨よ降れ~」と遠く離れた自宅から畑のある空に向かって手を合わせて踊っても雨は降らないので、チバニアンでは太陽光パネルで動く簡易型の自動潅水システムを導入している。オリーブを植えたポットをパレットの上に30鉢ほど置き、タイマーをセットできる自動潅水システムを設置した。幸いなことにチバニアンの圃場には自噴井戸があるため、そこから水を引くことができる。井戸がない畑では、大きなポリ容器に雨水を貯めておくなどして利用すればいいだろう。これで雨乞いの踊りは不要だ。

購入したオリーブのポットに僕は毎朝、水をやっている。剪定のしかたも教わったので挑戦してみたいが剪定バサミがない。「1、2年目は花を咲かせるとか実らせるとか一切考えず、枝ぶりよく、高く育つことを目的にした剪定を行えばいいです」と谷山さんは強調した。枝を切れば切るほど大きく育つそうだ。「ホネホネロックになるほど切っても大丈夫。すぐ元通りに生えますから」といっても、素人の僕は怖くてハサミを入れられない。「そんな方は写真を撮ってチバニアンのチャットにアップしてもらえれば、切るべき枝に赤丸を入れて返しますよ」とのやさしいお言葉。剪定バサミを買ったら、写真を撮って相談しようっと。(5期生マツケン)