第1号 兼業農家の新しいかたちを探して・月刊チバニアン

専業とは違う! 兼業農家の現実

専業農家と同じことをやってはダメですよ

これは、私が入校してくる方に最初に伝える言葉です。

専業農家の方たちは、働く時間のほとんどを農業に費やしています。作業を効率化するための農業機械も持っています。ところが、そうした専業農家の大部分が、必ずしも儲かっているわけではありません。そこに、週に1~2日しか農作業ができない兼業農家が、同じようなやり方を真似してもうまくいくわけがないのです。

実際、多くの兼業農家希望者は、週末しか畑に来られません。いや、「週末2日」も幻想に近いかもしれません。本校の生徒には、40代・50代の働き盛りの方が多くいます。みなさん平日はフルで働いています。土曜の朝、1時間かけて車で畑に来て、作業をして、帰ったらもうぐったり。週末は用事が入ることも多く、週に1日農作業ができたら上出来、というのが現実なのです。

そんな中で、「JAに出荷しろ」「市場向けに大量生産しろ」といった専業農家と同じ目線のアドバイスを受けても、実行できるはずがありません。市場に出すには、量も質も一定以上が求められますし、そもそもそういった作物は専業の方々がすでに大量に作っています。そこに週1農業で挑んだって、太刀打ちできません。だから、私たちが目指すべきは、まったく違う発想です。例えるならば、格闘技という範疇では同じですが、”相撲“と”プロレス“くらい種類が違うのです。

兼業農家が意識すべき専業農家との違い

専業農家は、その年の収益を確実に上げなければならないのが前提です。生活のすべてが農業にかかっているため、計画的に作物の植え付けや収穫を行い、市場やJA(農協)への出荷ルートも整っています。ニンジンを数万本育てるとか、暖房設備を整えたハウスで年間を通してキュウリを栽培するとかいった具合です。

これらの作物は、市場での買い取り価格もだいたい決まっているため、計画的に栽培でき、収益の見通しも立てられます。しかし、そのためには莫大な投資や機械の導入が必要になり、1,000万円単位の初期費用がかかることもあります。

では、週に1~2日しか農作業ができない兼業農家が、このような大量生産を目指せるでしょうか?答えは”No”です。時間も技術も機械も十分にない状況で、大きな投資と大量生産で専業農家並みの収益を見込むのは現実的ではありません。実際、兼業農家のほとんどは、週5日働く専業農家に比べて圧倒的に農作業に費やせる時間が足りず、出荷レベルの生産を目指すことがそもそもできません。

週1農業だからこそできる農業とは

この現状を踏まえて、私は兼業農家を目指す人たちに対して「専業農家がやっていることはやってはいけない」と伝えているのです。兼業農家は、専業とは違ったアプローチで農業と向き合うべきです。

たとえば、稲作は週1農業でも比較的取り組みやすい作物です。田植えや稲刈りは大仕事ですが、栽培中の管理はそこまで頻繁ではありません。実際、代々の農家の方たちでも、現役世代は会社勤めをしながら、兼業農家として田んぼを管理しているケースは少なくありません。

ジャガイモやサツマイモなどのイモ類、ニンニクやタマネギなども、比較的管理が楽で兼業農家が取り組みやすい作物です。これらの作物は貯蔵性が高いため、年間を通して出荷していくことも可能です。さらに、果樹のように、数年・数十年という長期間にわたって成長を見守る必要がある作物も兼業に向いています。新規で果樹を始める場合、実がなるまで数年は収益が上がりませんが、本業で収入がある兼業なら、それをリスクとせずに長期的な計画でスタートすることができます。

加工品販売と週末イベントの活用

私たちは、単に作物を育てて売るだけでなく、加工品販売による収益アップも推奨しています。トルネードポテトやポップコーン、焼きイモといった農産物加工品は、道の駅や週末イベントで販売するのに適しており、土日に集中してお客さんに直接売ることができます。この方法は、作物をそのまま出荷する場合に比べて大きな付加価値をつけられます。

ジャガイモは3月に植えつけて6月に収穫できます。そのうえ貯蔵性が高いので、残りの期間は自分がつくった無農薬・無化学肥料のジャガイモを使ってトルネードポテトを販売する、といった戦略も立てられます。

サツマイモであれば、栽培期間は5~10月です。しかも、ほぼ管理は不要。シーズンオフの冬は販売に注力できますし、焼きイモが売れる季節でもあります。 農業は、栽培はもとより、それを売って収益をあげることが重要です。その点で、入り口から出口までを考えた週末6次産業は、兼業農家の新しいスタイルとして考えてもいいでしょう。さらにジビエの例で、キョンの焼き串を600円で、600本土日に売った事例なども研究しています。タケノコや枝もの、里山には様々な資源があるので、それを学ぶ講義にも力をいれています。

兼業農家の強みは「チーム戦」

もう一つ、わが校で目指す兼業農家のスタイルに「チーム戦」があります。

多くの場合、農業は個人や家族で営みます。一方、わが校では、学校という集団の中で必然的にコミュニティが生まれます。そのつながりで、生徒同士が協力して畑を管理することで、農作業に携われる限られた時間をフォローしあうことができるのです。

実際に、私たちは「ベース(BASE)」と名付けたオリーブの共同畑を、複数人で分担して管理しています。お互いのスケジュールに合わせて交代で手入れをすることで、週1農業でも畑を維持できるのです。チームとして動くことで情報共有もスムーズになり、無理なく持続可能な農業が成立します。(詳細は、チバニアン兼業農学校 / ベースとは?)

「農業=専業」という思い込みからの脱却

じつは、多くの人が「農業=専業農家のやり方」という思い込みを持っています。兼業農家を目指す人も、最初は多くの部分で専業農家をイメージしています。しかし、それは家庭菜園と専業農家の間に無理に入ろうとすることであり、結局、どちらも中途半端になりがちです。

私が提案するのは、専業農家でも家庭菜園でもない「兼業農家の独自進化系」です。週1日という限られた時間の中で、無理なく続けられ、暮らしを豊かにする農業のかたちです。現在、4年目を迎えた当校では、その現実に即し、サラリーマンが無理なく就農ができる環境を様々に作っています。

自給自足以上、専業未満。暮らしから始める農のかたち

生業として農業を営むのであれば持続可能な収益は大切ですが、農業は「自然の中で暮らしを楽しむ」「自分で食べるものを自分でつくる」というお金には換算できない価値もあります。

兼業農家は、本業があるからこそ、農にかける時間もお金も限定的です。しかし、趣味と生業の間でゆっくりと農業と付き合うこともできます。生徒の中には農をベースにした自給自足的暮らしを目指している人も多くいます。そうした暮らしの延長で収益が上げられれば、無駄もありません。それも、兼業農家のひとつのスタイルです。

週1農業のすすめ

私はいつも、「週1農業は可能だ」と言っています。オリーブやイモ類のような省力型作物を育てつつ、チームで協力し合うことで、無理なく持続可能な農業が可能です。さらに、加工品販売やイベント出店など、販売方法も工夫すれば収益の柱もつくれます。週に1日であれば、確かに歩みは遅いかもしれませんが、前には確実に進んでいます。5年かけて収益源を作り、定年後、時間に余裕ができてから、それを活かすこともできるのです。

農業はもっと自由でいいし、自分にあったやり方を自分自身でつくればいい。私たちチバニアン兼業農学校は、そういう新しいスタイルを実践し、伝えていく拠点であり続けたいと考えています。

2025年8月NEWS

農文協より、出版された「続 使い切れない農地活用読本」に以前取材を受けましたチバニアン兼業農学校が再度掲載されました。

続 使い切れない農地活用読本 もっと: 小さくはじめる、楽しく稼ぐ

2023年4月、農地取得の下限面積が廃止となりました。これによって、小面積の農地の貸借が急増し、子育て世代や定年退職世代の非農家を中心に「小さい農業」が広がっています。また、各地で小さい農業を育てる学校や体験農園が人気となり、修了後は農地を取得して専業農家になる人も出てきました。

本書は、半農半Xや有機農業で人を呼び込み、余った農地をフル活用して地域を元気にする「使い切れない農地活用読本」の続編であり、「小さい農業」を始めるときの手引きとなります。「I まちで、むらで 小さい農業を始める」では、都市近郊の「マイクロファーマーズスクール」や農村部の「烏川体験農場」を中心に、農業以外の仕事をしながら自給自足暮らしを目指す人や農家と一緒に農業を学ぶ場をつくる人など、農的LIFEを楽しむ人を育てる仕組みを紹介。「II 手間をかけずに農地を活かす」では、稼げる品目(ヘーゼルナッツ、アーモンド、ムクナマメほか)や、粗放栽培に向く品目(枝物、ヨモギ、クランベリーほか)、獣害に強い品目(イタドリ、カモミール)など、遊休農地におすすめの32品目を解説します。「III 知っておきたい 農地の制度と法律」は、実際にあった農地の法律相談など、身近な話題がテーマになっています。そして「IV みんなで農地を守る」は、人と農地の問題をどのように考えていったらよいか、地域での話し合いによる「地域計画」の作成の仕方や農地を守る組織づくりの実践を取り上げました。

なぜ君は農家になれないのか ?
当校の特徴
入学案内