ゼロからはじめる 稼ぐ農業 必ず知っておきたいこと100

ゼロからはじめる 稼ぐ農業 必ず知っておきたいこと100

この本を読んで、改めて専業農家と兼業農家の違いについて深く考えさせられました。この本はタイトルの通り、農業で「稼ぐ」ための実践的な知識が100項目にわたって丁寧に紹介されており、特に専業農家を目指す人には非常に役立つ内容だと思います。全体としてはよくまとまっていて、信頼できる一冊でした。

最初に驚いたのは、前書きに書かれていた「新規就農から10年以内で農業所得のみで生活できている人は、わずか38.1%しかいない」という現実です。数字で見ると厳しさがぐっと伝わってきます。さらに、新しく農業を始めるには1000万円程度の初期投資が必要とされること。土地、機械、設備、販路、すべてをゼロから整えるとなると、資金面だけでもかなりの覚悟が必要です。もちろん、農業でしっかり収入を得るためにはそのくらいの準備は当然なのかもしれませんが、リスクを踏まえると一般的なサラリーマン家庭ではなかなか踏み出せる金額ではありません。

この本を読み進めるうちに、「なぜ自分は専業農家を目指していないのか」が、むしろはっきりしてきました。農業で食べていくには、自然災害、価格の変動、販路の確保など、たくさんの不確定要素があり、言ってしまえばかなりのリスクがあります。そして今の日本では、農業自体が“ゼロサム”な世界になっている印象もあります。つまり、農家になるか、ならないかという二択でしか語られがちで、間にある“兼業”という選択肢が軽視されていることに気づきました。

この本の最大の価値は、そうしたリスクや厳しさを包み隠さず、正直に伝えてくれていることだと思います。農業の魅力を語るだけでなく、その裏にある現実のハードルをしっかり書いているところに、著者の誠実さを感じました。その一方で、ここまでしても農家になる意味とは何なのか、自分はなぜ農業に惹かれるのか――そんな問いが自然と頭の中に浮かんできました。

もし、自然と共に生きるライフスタイルを実現したいというのが本質的な目的なら、必ずしも専業になる必要はないと思います。むしろ、他の収入源を持ちながら、自分のペースで農に関わる「兼業農家」という形の方が、リスクを抑えつつ、農業の楽しさや生きがいを長く味わうことができるのではないかと感じました。

もちろん、専業農家を目指す方にとっては、この本は間違いなく信頼できる一冊です。ただ、これから農業に関わろうとしているすべての人にとって、「自分にとっての農業とは何か」を考えるきっかけにもなる本だと感じました。兼業であっても、ライフスタイルとして農業を選ぶ人はこれからもっと増えていくはず。そんな時代のなかで、農業との関わり方を自分なりに見つけていくことの大切さを、この本が改めて教えてくれました。

本の概要

農業を始めるにはいくら必要なのか、どこで何を作るかはどうやって決めればよいのか、売り先はどう選定すべきなのか…。新規就農者が稼ぐ農業を始めるために知っておくべき知識、考え方、マインドを徹底網羅!

コロナ禍を機に都会を離れて地方に移住し、ビジネスとして農業を始める人が増えています。しかし、思ったような収益があげられず、自転車操業になってしまったり赤字に苦しんだりしている人は少なくありません。 農業で生活していくために必要なのは「農業で稼ぐ」こと! 農家になるということは起業するということですから、農作物だけでなく経営の知識も必要です。

本書では現場で活躍する3名が、経営の基礎知識やお金、農地、品目、売り先、マインドなどを、今まで経営なんてしたことがないという人にもわかりやすく解説。稼ぐためのノウハウや成功のポイントをしっかりおさえておくことで、農業初心者でも安定して収益をあげることができます。農業で稼ぐために知っておくべきことを網羅した、これから農業を始めてみたい人の必携書です。

目次


 第1章 農業を始める前に知っておくべきこと
 第2章 農業を始めるうえで必要なお金の知識
 第3章 農業を始める前に決めておくべきこと
 第4章 農業を始める場所を見つける
 第5章 何を作ればいいか品目を決める
 第6章 どこに売るかを決める
 第7章 農作物を作るうえで必要な基礎知識
 第8章 農業で成功するための心構え

著者について


 高津佐和宏(こうつさ・かずひろ)

合同会社アグリビジネスパートナーズ代表社員。農業経営コンサルタント。上級農業経営アドバイザー。農業経営コンサルタントとして2018年4月に独立。独立後は、農家を直接支援するために、各SNSで「儲かる農家になるための情報」を発信しながら、講演・セミナー活動、個別コンサルなどを行っている。主宰する「儲かる農家のオンラインスクール」には全国260名(2025年1月時点)の有料会員が在籍している。た、これから農業を始めてみたい人の必携書です。

寺坂祐一(てらさか・ゆういち)

寺坂農園株式会社代表取締役。18歳で“超赤字農家”を継ぎ、苦境の中でメロン栽培を拡大。直売所の開設を機にダイレクトマーケティングを学び、農業に応用。8年で売上4倍、年商1億円を達成。『北海道・富良野からおいしいメロン・野菜を全国にお届けし、お客様に「おいしいっ」と喜んでほしい』を理念に据え、産地直送に取り組む農業を続けている。た、これから農業を始めてみたい人の必携書です。

潮田武彦(うしおだ・たけひこ)

うしおだ株式会社代表取締役。肥料メーカーの家に生まれ、名人農家の技術を継承。農業歴25年。「人参物語まるごと100%にんじんジュース」は経済産業省 The Wonder 500 に認定。「土作り、栽培、経営、6次産業化、IT」 まで、農業の全プロセスを支援できる唯一の農業コンサルタント。「集中するものは拡張する」「土作りが農業の問題を全て解決する」をモットーに、全国各地で個人指導・講演を行い、300人以上の農業者を支援。無心無欲で農家の経営改善に取り組む。

監修

農業始めたい人の学校。成功する農業経営に必要なことを1年間で学ぶオンラインスクール。現場で活躍する寺坂祐一、潮田武彦、高津佐和宏の3名が講師を務める。

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