ミツバチと暮らす (自然暮らしの本)

ミツバチと暮らす (自然暮らしの本)

養蜂という営みは、農業の中でもどこか特別な位置づけにある。作物を「育てる」のではなく、生きものと「共に暮らす」ことで成り立つ仕事だからだ。本書『ミツバチと暮らす』は、その本質を、驚くほどやさしく、そして誠実に伝えてくれる一冊である。
著者は、岩手県で三代にわたり養蜂を営んできた家系の出身だ。机上の理論ではなく、土地の気候、花の移ろい、蜂の機嫌と向き合い続けてきた時間が、そのまま文章の厚みになっている。養蜂を「儲かるか、儲からないか」という単純な軸で語るのではなく、暮らしと仕事が重なり合う営みとして描いている点に、本書ならではの説得力がある。
個人的にも印象深いのは、著者の娘さんが大学で教職に就き、当校チバニアン兼業農学校でも実際に講義を行っていただいている点だ。講義では、ミツバチへの深い敬意と情熱が自然と伝わり、生徒からの評価も非常に高い。単なる技術指導にとどまらず、「なぜ養蜂を続けるのか」「なぜミツバチと向き合うのか」という根本的な問いを投げかけてくれる。その姿勢は、本書の随所にも色濃く表れている。
内容面では、小規模養蜂の始め方から、ミツバチの生態、季節ごとの管理、リスクとの付き合い方まで、非常にわかりやすく整理されている。専門用語に振り回されることもなく、初心者がつまずきやすいポイントを先回りして丁寧に解説している点は、これから養蜂を検討する人にとって大きな安心材料になるだろう。
特に注目したいのは、小規模養蜂が兼業農家に適しているという視点だ。確かに、技術の習得には一定の時間がかかる。しかし一度基礎が身につけば、作業時間は比較的コンパクトで、収益性も高い。農地面積に大きく依存しない点も、兼業就農者にとっては大きな魅力である。本書は、その現実的なメリットと難しさを、過不足なく伝えている。
チバニアン兼業農学校としても、養蜂は今後ますます重要な講義テーマの一つだと考えている。主作物に依存しすぎない収益構造をつくることは、兼業就農の持続性を高めるうえで欠かせない。その選択肢として、養蜂は非常に相性がよい。本書は、その第一歩を踏み出すための、信頼できる伴走者になってくれるはずだ。
ミツバチと共に生きるという選択が、どれほど奥深く、そして現実的であるか。本書は、養蜂を「特別な人の仕事」から、「自分にも手の届く営み」へと引き寄せてくれる。兼業就農を志すすべての人に、ぜひ手に取ってほしい一冊である。
本の概要
ミツバチの驚くべき生態かつ飼育法、その知られざるパワーまで、豊富なカラー写真でわかりやすく解説する「ミツバチの飼い方の本」初心者でも楽しめるミツバチの飼い方を徹底解説 近年、はちみつの健康効果に注目が集まり、ミツバチを飼育する人が増えています。本書では、養蜂家であり、飼育が難しいとされていた日本ミツバチの飼育法を開発した著者が、ミツバチの入手方法から、飼い方、巣箱のつくり方、はちみつの採集方法などを、ていねいに解説します。これから田舎暮らしをはじめる方、自分でミツバチを育ててみたい方におススメの冊です。
目次
Chapter1 ミツバチと暮らす人々
君塚忠彦さん
安田佳弘さん
兼平 進さん
竹岡豊美さん
Chapter2
初めてのミツバチQ&A
Chapter3
ミツバチの飼い方
ミツバチ飼育のメリット
服装と道具を用意する
ミツバチを飼うまでの流れ
ミツバチの体と巣の仕組み
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは同じ場所で飼えるのか ミツバチに刺されたときの対処法
人工王台のつくり方
皇居のほとりから始まり全国的に広がりつつある屋上養蜂
巣箱の種類と選び方
巣箱の最適な設置場所
人工巣とは カーボネート製の巣礎枠と人工巣脾枠をおすすめしたい4つの理由
蜂群を観察する
巣箱の買い方とつくり方
覚えておきたい養蜂技術 巣箱編
ミツバチの飼育ごよみ
ミツバチの自然分封とは ミツバチの分封群と逃去群
分封群の誘い寄せ方と移し方
ニホンミツバチを捕まえる
知っておきたい蜜源の話
近隣トラブルと対処法
ミツバチの病気と被害の対処法
あると便利な養蜂アイテム
Chapter4
ミツバチの恵み
はちみつとは
はちみつの薬効を知る
ミツバチからの恵み
採蜜してみよう
はちみつにまつわる豆知識
はちみつの種類と味の特徴を知る
はちみつを使ったセルフケア
蜜蝋を採る
蜜蝋でつくる癒しアイテム
体に優しく心も癒す蜜蝋アイテム10
はちみつレシピ
Chapter5
もっと知りたいミツバチのこと
養蜂の歴史
ミツバチ・はちみつの学校
ミツバチの各種イベント
全国養蜂器具&アイテム販売店
養蜂用語集





