第5号 将来の安心収入を確保する!兼業農家の営農型太陽光発電入門

目次
兼業農家の営農型太陽光発電入門

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農地に簡易で容易に撤去できる支柱を立て、その上部空間に太陽光発電設備を設置する取り組みです。農業を継続しながら電力を生み出すことができ、作物の販売収入に加えて、発電電力の売電や自家利用により、農業経営の改善や安定化が期待できます。
実はこのソーラーシェアリング、日本で最初に本格的な実証が行われたのは、チバニアン(地質年代)が発見された場所として知られる市原市です。地球の歴史を語る重要な地と、未来のエネルギーと農業をつなぐ挑戦が、同じ地域から始まったという点は非常に象徴的だと言えるでしょう。
その後、営農型太陽光発電は日本国内にとどまらず、現在ではヨーロッパやアジアをはじめ、世界各地に広がっています。気候変動対策やエネルギー自給、農家所得の安定化といった課題への有効な解決策として、国や地域を越えて注目される存在となっています。
なお、営農型太陽光発電の制度や基本的な考え方については、農林水産省のウェブサイトでも詳しく紹介されていますので、制度理解や導入検討の際にはあわせて参考にしてください。
将来の安定収入を確保する

ここでは、なぜ兼業農家が営農型太陽光発電を導入すべきなのか、その本質的な理由についてお話しします。
兼業農家にとって、営農型太陽光発電は非常に理にかなった仕組みです。本業を持つ兼業農家は、どうしても農作業に充てられる時間が限られ、作物生産だけで収入を積み上げていくには限界があります。その点、営農型太陽光発電は、農業分野ではほぼ唯一と言ってよい「ストック型収入」を生み出せる手段です。一度導入すれば、日々の労働時間に大きく依存せず、安定した収入が積み上がっていきます。
定年後に必要とされる月額10万円程度の生活補填収入を、太陽光設備一基で確保できるという点も重要です。太陽光発電の収益予測は、実際に多くの事例で現実的な水準として成立しています。農業収入の変動を補い、将来の生活設計を支える「第二の年金」のような役割を果たす存在だと言えるでしょう。
さらに重要なのは、営農型太陽光発電が、現在では「農業者だからこそ取り組める職業上のメリット」になっている点です。農地の上部空間を活用できるのは、農業を継続する者に限られます。つまり、農業に関わること自体が、将来にわたる安定収入の選択肢を手にすることにつながっているのです。
本校に入学し、これから農業を始めようとする方の多くは40代後半から50代です。今は元気でも、年齢を重ねるにつれて体力は確実に落ちていきます。今のうちから営農型太陽光発電を始めておけば、将来、体が思うように動かなくなったときでも、一定の収入を確保することができます。これは10年先、20年先を見据えたうえで、極めて大きな意味を持ちます。
農地は、作物を栽培しなければ収入を生まず、やがて荒れていきます。耕作放棄地にしないための草刈りも、手間と時間がかかるだけになりがちです。「何のために農地を維持するのか」という問いに対し、営農型太陽光発電は明確な答えを与えてくれます。農地を活かし続けながら、将来の安心も同時に手に入れる。その現実的な選択肢となりうるのです。
助成金の活用で設置費用の負担を軽減

本校では、電力サービス会社「みんな電力」と協力した営農型太陽光発電を検討しています。みんな電力は、日本で初めてブロックチェーン技術(どこの発電所で、誰が電気を作ったかを確実に証明できるシステム)を導入し、電気の産地直送を実現した新電力です。再生可能エネルギーの建設が自然破壊を伴わず、地域住民と良好な関係を築いているかなど、独自の厳しい基準を設けており、環境負荷の低減にこだわっています。消費者は「どこで、誰が、どう作ったか」を理解した上で電気を選ぶことができ、支払ったお金が地域の環境保全や経済活性化に直接貢献する実感を得られるのもユニークな仕組みです。本校としても、選ばれる電気を目指せることは価値があります。
さらに、東京都の「小売電気事業者による再エネ電源先行拡大事業」の助成金を利用できるのもポイントです。対象経費の1/2、または15万円/kWのいずれか少ない額が助成対象となります。
みんな電力の電気の買取価格は11.5円/kWh(税抜き)、契約期間は10年です。助成金を利用することで初期費用負担を軽減できるのは大きなメリットです。また、みんな電力が過去に公開していた買取単価を参考にすると、契約更新となる11年目以降は12~14円/kWhが目安となります。なぜ、買取価格より高くなるかというと、10年目までは助成金の利用により価格が抑えられているためです。
なお、FIT制度(固定価格買取制度)での2026年の事業用電力(10kW以上50kW未満)の買取価格は約9.9円/kWh(20年間固定)と想定されています。 「小売電気事業者による再エネ電源先行拡大事業」については、東京都のウェブサイトを参照してください。
年間売電収入132万円!

営農型太陽光発電は発電効率が非常に重要です。電圧区分は10kW以上50kW未満の低圧と決まっており、通常は49.9kWのパネル設置で足りますが、発電量が最大になるのは快晴時の正午前後だけです。朝や夕方、曇りの日は発電量が大きく落ちます。そこで、あえて50kWを超えるパネルを設置することで、日差しが弱い時間帯でもより多くの光をキャッチし、発電量を増やすことが可能です。日中の最も日差しが強い時間帯には50kWを超えますが、その分は捨てられます。しかし、1日の総発電量の増加が収益性向上に直結するため有効です。
ここで電気の出力を50kW以下に調整する機器をパワーコンディショナ(以下、パワコン)と言いますが、パワコンの容量を超えて、より多くの太陽光パネルを設置し、発電効率を上げるこの方法を「過積載」と言います。
1反の農地で設置できる太陽光発電パネルの容量は約102.3kW(550W×186枚)です。すると、実際の投資と収益は次のように試算できます。
- 設置費用:通常約1,200万円 → 助成金利用で約600万円
- 年間発電量:約10万5,000kWh(実績値)
- 年間売電収入:約132万8,000円(11.5円×10万5,000kWh+消費税10%)
ランニングコストとして設備の保険料、農地の固定資産税、パネルの劣化に伴う発電量の低下も考慮すると、10年間の平均実質年間収入は約115万円。11年目以降、買取価格が上昇すると年間約125万円の収入が期待できます。
半日陰でよく育ち、管理が楽な作物の選び方

営農型太陽光発電は農業をしながら売電収入を得る仕組みですが、農地に太陽光発電パネルを設置すると日照量が減少するため、栽培作物の選定が重要です。植物は光合成によって炭水化物と酸素を作りますが、光の強さが一定量を超えると光合成の速度はそれ以上増えません。これを光飽和点といいます。光飽和点は作物によって異なり、強い光を必要とする作物と弱い光でも育つ作物があります。
光飽和点が高い作物としてはイネ、トウモロコシ、トマト、ナス、スイカなど、イネ科や夏の果菜類が代表的です。一方、光飽和点が低い作物にはレタス、ホウレンソウ、シソ、ミツバ、イチゴなどがあります。シイタケやキクラゲなどの菌類も光合成をしないため弱光で栽培できます。営農型太陽光発電では、こうした弱い光でも育つ作物を選びます。
本校で注目しているのはドクダミです。半日陰を好み、薬草・健康素材として需要があります。強健で管理負担が少ない多年草なので、兼業農家に向いています。私が調べたところでは経費などの諸費用を除いて1反あたり30~50万円程度の収益が見込め、太陽光発電と組み合わせれば年間160~200万円の利益が期待できます。
農地探索から申請まで導入のサポート体制を構築

ここまで、営農型太陽光発電の導入メリットと栽培作物の考え方について述べましたが、実際に導入する場合、設置までにいくつかのハードルがあります。
- 実績の少ない兼業農家の申請は難易度が高い
- 50kW以上の発電が前提のため、低圧1基では申請不可。2基以上の設置、または複数者での共同申請が必要
- 農地探し
- 農業委員会交渉、電力会社申請、住民説明
- 初期費用の調達。完工から補助金受給まで約2か月かかるため、一時的に全額必要
(1)(2)については本校修了生を対象にまとめて請け負うことで申請を容易にし、(3)(4)についても本校でサポート体制を構築予定です。(5)資金面は自己資金、または銀行融資を活用してください。営農型太陽光発電の事例、手続き、金融支援策は以下の資料も参考にしてください。
みんな電力の参加表明は2026年1月5日まで、申請期限は2月初旬です。それに合わせて本校でも参加者を募り、併せて睦沢町を中心に急ピッチで農地探索を進めています。営農型太陽光発電は大きなメリットがあります。今回のみんな電力との協力を契機に、本校が提唱する里山年金(里山の資源と農家の特権を活用した仕組み)の柱のひとつとして、今後も広げていきたいと考えています。





