令和の米騒動 食糧敗戦はなぜ起きたか?

令和の米騒動 食糧敗戦はなぜ起きたか?

久しぶりに鈴木宣弘教授の新著を手に取りました。長年、国内農政の現場に切り込んできた教授らしく、今回の本も「食料安全保障」の危機を真正面から問う内容です。これまでの著作と重なる部分もありますが、むしろその「繰り返し」にこそ、教授の一貫した警鐘と焦燥が感じられます。
特に印象的だったのは、「農業予算の削減が、いまの食料不足を招いた」という指摘。これは単なる理論ではなく、数字と現実に裏打ちされた重い言葉です。私も基本的にその意見に賛同します。国の方向転換には時間がかかります。だからこそ、「待つ」のではなく「動く」。それが私たちチバニアン兼業農学校の立ち位置でもあります。
この本を読みながら改めて感じたのは、「とにかく自分で稲作でも始めてみること」の大切さです。政策を嘆くより、まず一粒の種をまく。自分の手で土を触り、作物の命を感じることが、どんな評論よりも深い理解につながります。
平成の米騒動から令和の米騒動までの30年。今後は気候変動、農業人口の減少、政策の迷走、そしてグローバル市場の波により、同様の事態がより短い周期で繰り返されるでしょう。もはや「政府が守ってくれる」時代ではありません。自分の家族の食をどう守るかが問われています。
2025年11月1日には、鈴木教授が睦沢に講義に来られます。直接お話を伺える機会が今から楽しみです。きっと今回の本の背景にある「現場の危機感」と「希望の芽」を、さらに具体的に語ってくださることでしょう。
本の概要
スーパーからコメが消え、過去最高の小売価格を記録し、国政のど真ん中に躍り出た「令和の米騒動」。政府備蓄米の放出、輸入拡大によって事態は一時的に沈静化したかのように見えたが、構造的に市場へのコメ供給が足りなくなってきていることが明白になった。温暖化による米の不作もその一因だが、より根深いのは長年にわたって推し進められてきた生産調整政策の限界、低い米価による農家の疲弊、高齢化問題などに積極的な策を講じてこなかった農政の失敗という構造的な要因だ。
この数年でパンデミックを経て戦争が頻発し、アメリカとの関税交渉の中でコメの輸入拡大措置を飲むことにもなった。自給率100%を誇った日本のコメは過去のものとなり、日本の食料安全保障はいよいよ全面崩壊するのか。「規模拡大とスマート農業と輸出」を連呼しても危機は深まるだけだ。真に日本の農と食を救う具体策はあるのか。
「食の戦争」がベストセラーとなった第一人者の著者による構造分析と未来への緊急提言!
著者 鈴木 宣弘
1958年三重県志摩市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科教授。1982年東京大学農学部農業経済学科卒業後、農林水産省に入省。九州大学大学院教授などを経て、2006年より現職。コーネル大学客員教授、食料・農業・農村政策審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員、国際学会誌Agribusiness編集委員などを歴任。食料安全保障推進財団・理事長。
著書は2022年食農資源経済学会学会賞を受賞した『協同組合と農業経済学 共生システムの経済理論』(東京大学出版会)、一般書としては『食の戦争』(文春新書)、『農業消滅』(平凡社新書)、『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社+α新書)、『マンガでわかる 日本の食の危機』(方丈社)など多数。






