「ふるさと回帰」という選択─広がる地方移住

「ふるさと回帰」という選択─広がる地方移住

本書「ふるさと回帰」という選択─広がる地方移住は、地方移住ブームを表層的に追うのではなく、その背景にある思想と現場のリアルを丁寧に掘り下げた一冊だ。二〇年以上にわたり移住相談の最前線に立ってきた「ふるさと回帰支援センター」の蓄積と、著者自身の相談員としての経験が重なり、移住を巡る成功談だけでなく、迷いや失敗、葛藤までが率直に描かれている点が印象的である。
特に興味深いのは、「移住だけが答えではない」と明言している点だ。地方に行くこと自体を目的化するのではなく、自分にとっての働き方や暮らし方を再設計する視点が一貫している。これは、首都圏在住のまま農に関わる兼業就農を提案するチバニアン兼業農学校の考え方とも重なる部分が多い。
本書は、地方移住か都市残留かという二択ではなく、多様な関わり方を認める時代に入ったことを静かに示してくれる。移住を考えている人はもちろん、「今の暮らしをこのまま続けてよいのか」と感じている人にこそ、手に取ってほしい一冊である。自分なりの”ふるさと回帰”を考えるための、確かな思考の土台を与えてくれる。
移住の7ステップ
STEP01:移住の目的を考えよう
なぜ、いまの暮らしを変えて、別の場所で生活したいのか?大切なのは、移住の目的を明確に持つこと。「子どもが小学生になる前に、自然豊かな場所に移りたい」「半年以内に夫婦で農業を始めたい」など、「誰と」「いつまでに」「どんな場所で」「どんな暮らしをしたいか」を具体的にイメージしてみましょう。
STEP02:家族やパートナーの気持ちを確認しよう
「移住したいな」と漠然と考え始めたら、まずは身近な家族やパートナーに話しましょう。お互いに意見を出し合い理想の暮らしを描いていきましょう。地方で暮らすのに必要な仕事や子どもの教育のことなど、5年後、10年後もふまえ、じっくり話し合ってください。
STEP03:条件をリストアップしよう
理想の暮らしに必要だと思う条件をリストにして“見える化”し、優先順位を付けると移住先がイメージしやすくなります。例えば「サーフィンが身近にある暮らし」「温泉地でテレワーク」など。実家との距離、気候、子育て環境などをリストアップしていくと、移住先が絞り込みやすくなります。
STEP04:各地域の情報を集めよう
いよいよ移住先探しです。気になる地域や自治体があれば、インターネットで調べたり、移住相談窓口で相談したり、自治体主催の移住セミナーへ参加したり、より詳しい情報を集めましょう。地域が決められない場合は、複数の自治体が参加する「移住フェア」に足を運ぶと、理想の暮らしが実現できる移住先が見つかるかもしれません。
STEP05:現場に足を運んで「暮らし」を体験しよう
移住候補地が決まったら、実際に現地に足を運びましょう。自治体が実施する「現地案内」や「移住体験ツアー」、「お試し住宅」などを利用して、地域の人の話を聞き、実際の生活を体験してみましょう。「お試し住宅」を利用している自治体もあります。季節ごとに訪れ、暑さや寒さも体感しておくことが理想です。
STEP06:移住後の準備をしよう
地方では職種の選択肢が少ないこともあり、希望の仕事に就けない可能性もあります。地方で働くなら、どのような求人があるか事前に確認しましょう。移住では住居の確保も大切です。物件が少ない地域では、自治体ホームページなどで公開される「空き家バンク」の情報も確認してみましょう。
STEP07:いよいよ移住!
晴れて移住が実現したら、新しい環境での生活が始まります。これまでのライフスタイルや考えを大きく変える必要はありませんが、地方には地域ごとの慣習や決まり事があります。何か困ったことがあれば自治体や先輩移住者などと相談しながら、あなたにとっての理想の暮らしを実現しましょう。
本の概要
自分らしい暮らしを探る若者世代など、地方移住が活況を呈している。20年以上にわたり、国内唯一の移住相談センターとして、その流れを牽引してきた「ふるさと回帰支援センター」。青森県の移住・交流相談員を務める著者が、自らの経験や、移住者たちの声を交え、移住の歴史的背景、「いい移住」への課題などを考察する。
目次
はじめに
第1章 「ふるさと回帰」を目指して――地方移住の広がり
1.ふるさと回帰運動が始まるまで――地方移住をめぐる動き
2.新しい生き方の提案――運動の展開と政府の移住施策
3.東日本大震災、地方消滅から地方創生へ
4.データからみる移住相談傾向の変化
5.ふるさと回帰運動が目指すもの――創業者・高橋公の思い
第2章 移住相談の現場とそれぞれの移住
1.移住相談とは
2.サラリーマンを辞めぶどう農家に――移住体験談と地域の声 その一
3.地方で起業――移住体験談と地域の声 その二
4.移住だけが答えじゃない――様々な相談事例
第3章 地方移住がひらく日本の未来
1.「いい移住」を実現するために
2.地方移住は今――コロナ禍、そして「地方創生」10年を経て
3.真の豊かさが感じられる社会へ――ふるさと回帰運動の可能性






