税理士のための農業ビジネス実務ハンドブック

税理士のための農業ビジネス実務ハンドブック

まず、3300円という価格の高さに驚きましたが、内容を考えると納得です。この本は、農業ビジネスに携わる税理士や経営者にとって非常に役立つ一冊です。市場は狭いかもしれませんが、その分専門性が高く、しっかりとした情報が詰まっています。著者は弁護士で公認会計士でもあり、その知識と経験がしっかりと反映されています。特に、最後の「農業ビジネスの構造」に関する部分は非常に参考になりました。

この本は、一気に読むというよりも、必要なときに辞書のように使うと良いと思います。例えば、農地法などに困ったときに手に取ると良いでしょう。所有者不明の土地を農地中間管理機構を通じて借りられるように法改正があったことも、この本で初めて知りました。これは大きな進展で、多くの人にとって有益です。また、融資一覧も丁寧にまとめられていて、資金調達に役立ちます。今後さらに規制が緩和され、農振地域に宿泊施設が建てられるようになる可能性についても触れており、この点には大いに賛成です。

本の概要

複雑な農業ビジネスの法律・税務や補助金制度について、その基礎知識から留意すべき点までを分かりやすく解説するとともに、その類型ごとに特徴や仕組み、留意すべきポイントを解説。顧客からの農業ビジネスに関する質問や相談に的確に対応するための1冊!

農業ビジネスに参入している(したい)顧客に関わる上で、複雑だと印象をもっている農業関係の法律・税務上の基礎知識から留意点までを、相続・法人経営・補助金制度など項目ごとにわけて分かりやすく解説。多様な農業ビジネスを類型別に分けた解説や、知っておくと役立つ最新の農業などの話題についてのコラムを掲載した、税理士や農業経営アドバイザーが顧客に的確に対応するための1冊

目次


第1章.農業ビジネスの基本と周辺状況
 1.農業経営体の推移
 2.法人経営体の内訳
 3.農業法人の経営実態
 4.農業種別の主な販売先
 5.農業以外の事業者の農業参入が容易化した法改正  コラム.歩(ぶ)・畝(せ)・反(たん)・町(ちょう)

第2章.農業ビジネスに関与する税理士等が知っておきたい農業関係法令の基礎知識
 1.農業関係法令の難解さ
 2.農地法
 3.農業委員会等に関する法律
 4.都市計画法
 5.農業振興地域の整備に関する法律
 6.生産緑地法
 7.農業経営基盤強化促進法
 8.都市農業振興基本法
 9.都市農地の貸借の円滑化に関する法律
 10.特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律
 11.市民農園整備促進法
コラム.許可制と届出制の違い

第3章.農業に関する会計
 1.農業簿記と一般簿記との違い
 2.消費税軽減税率に関連した区分経理
 3.棚卸資産の取扱い
 4.ビニールハウスの取扱い
 5.トラクター・耕運機の取扱い
 6.生物及び生物の育成
 7.共同的施設の設置・改良のために支出する費用
 8.農協を通じて出荷する委託販売
 9.収入保険
 コラム.農地転用と土地家屋調査士

第4章.農業ビジネスにおける税務
 1.所得税
 2.譲渡所得税
 3.消費税
 4.固定資産税
 5.償却資産税
 6.事業税
 7.事業所税
 コラム.農福連携

第5章.農家の相続にまつわる税務
 1.農家は税理士よりも相続税に詳しい?
 2.税務調査の状況
 3.税理士職業賠償責任保険事故事例
 4.農地を相続した場合の農業委員会への届出
 5.建更(建物更生共済)に留意
 6.財産的価値がないのに耕作権に課税されるリスク

第6章.農地相続税納税猶予制度
 1.概要
 2.農地相続税納税猶予制度の適用要件
 3.相続税納税猶予に関する適格者証明書
 4.担保権設定に関する手続
 5.納税猶予期限の確定
 6.営農困難時貸付けの特例と届出
 7.特定貸付けの特例と届出
 8.認定都市農地の貸付けの特例の届出手続
 9.納税猶予税額の免除
 10.平成3年1月1日における三大都市圏の特定市
 11.納税猶予期間中の継続届出
 コラム.相続土地国庫帰属制度

第7章.財産評価基本通達に基づく農地等の評価
 1.農地の分類
 2.農地分類ごとの評価方法
 3.生産緑地の評価
 4.農業用施設用地の評価
 5.地積規模の大きな宅地の評価
 6.地上権・永小作権の評価
 7.耕作権の評価
 8.貸し付けられている農地の評価
 9.ヤミ耕作させている農地の評価
 10.10年以上の期間の定めのある賃貸借により貸付けられている農地の評価
 11.都市農地貸借円滑化法に基づく認定事業計画に従って賃借権が設定されている農地の評価
 12.農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用集積計画の公告により賃借権が設定されている農地の評価
 13.農地中間管理機構に賃貸借により貸付けられている農地の評価
 14.果樹等の評価
 コラム.農地の地価

第8章.農地等の贈与にまつわる税務
 1.農地等の贈与による財産取得の時期
 2.農地を著しく低い価額で譲渡した場合のみなし贈与
 3.農地の共有持分を放棄した場合
 コラム.所有者不明農地の活用

第9章.農地贈与税納税猶予制度
 1.概要
 2.農地の贈与税納税猶予制度の適用要件
 3.贈与税納税猶予に関する適格者証明書
 4.担保権設定に関する手続
 5.納税猶予期限の確定
 6.営農困難時貸付けの特例と届出
 7.特定貸付けの特例と届出
 8.納税猶予税額の免除
 9.納税猶予期間中の継続届出
 
第10章.集落営農組織の税務
 1.集落営農組織の税務の概要
 2.人格のない社団等とは
 3.構成員課税と法人課税の分水嶺
 4.特定農業団体
 5.農事組合法人
 6.任意組合の組合事業から生じた損益
 コラム.GAP認証

第11章.農地所有適格法人(農業生産法人)の会計と税務
 1.農地所有適格法人とは
 2.農地所有適格法人となるための要件
 3.農地所有適格法人の子会社化に関する特例要件
 4.農地法上の年次報告
 5.農地所有適格法人要件を欠くことになった場合
 6.会計と税務におけるポイント
 7.農業経営基盤強化準備金
 8.農業経営基盤強化準備金取崩額の圧縮記帳

第12章.農業支援補助金の処理
 1.国庫補助金等の処理
 2.ハード事業に係る補助金
 3.ソフト事業に係る補助金
 4.留意点
 5.補助金交付事業年度に資産取得が完了しない場合
 コラム.フードテック推進と昆虫食

第13章.農業ビジネスの事業構造
 1.モデル計算式
 2.六次産業化
 3.農業融資
 4.農業従事者の確保
 コラム.農業では労働時間・休憩・休日に関し労働基準法の適用がない

第14章.農業ビジネス類型別のポイント
 1.農家レストラン
 2.自社農場(飲食業等他業種からの農業参入)
 3.移動販売・ケータリング
 4.観光農園
 5.農家民宿・農泊
 6.市民農園(貸農園)農地所有者
 7.市民農園(貸農園)運営事業者
 8.営農型太陽光発電
 9.耕作放棄地の再生
 10.農作物栽培高度化施設による農業
 11.ワイナリー
 12.農産物輸出
 13.CSA(農業×地域)
 14.特例子会社を活用した農福連携

著者情報

弁護士(第二東京弁護士会)、税理士、公認会計士。公益財団法人、東京都農林水産振興財団、チャレンジ農業支援センター、東京農業産業力強化支援事業、登録専門家

なぜ君は農家になれないのか?
当校の特徴
入学案内

前の記事

農家の年収、しんどい…

次の記事

農業ほど儲かる商売はない