第3号 新規就農の第一歩、「農地探し」のリアル 兼業農家として農地を借りるには・月刊チバニアン

目次
農地は不動産サイトに掲載されない?

自給のための畑を持ちたい、週末だけでも農業を始めたい―。
そんな思いを抱いたとき、最初にぶつかるのが「農地をどう手に入れるか」という壁です。全国に農地はたくさんありますが、いざ探そうと思っても、どこに情報があるのか、仮に農地が見つかったとしても、どうやって借りたり買ったりすればいいのか。これは、新規就農を目指す人の多くが抱える悩みです。
田舎に住んでいれば、近所のつてで所有者に直接つながることもあるでしょう。しかし、都会に暮らしながら週末だけ田舎で農的暮らしをしたい人にとっては、それもなかなか難しい。しかも、不動産サイトを見ても農地の情報はほとんど掲載されていません。
これは、宅地などに比べて農地の価格が低く、不動産業者にとって手数料があまり期待できないためです。加えて、基本的に農家でなければ買ったり借りたりできないこともあり、市場が狭く、ビジネスとして成立しにくいのです。また、不動産屋で紹介されている農地は、一般的な相場よりやや高額な場合も少なくありません。
全国の農地を探せる「農地ナビ」

では、どこで農地を探せばよいのでしょうか。
ひとつは、各都道府県に設置されている公的機関「農地中間管理機構(農地バンク)」です。所有者(貸したい人)から遊休農地を借り受けて、担い手(借りたい人)へ貸し出す仕組みで、ウェブ上でも情報公開を行っています。ただし、公的機関によくあるように、情報量は自治体の力の入れ方に左右されます。現実として、掲載物件数が十分でない地域もあります。
もうひとつの方法として、国が運営する「eMAFF農地ナビ」もあります。市町村や農業委員会が整備した農地情報を地図上で公開している国のサイトで、条件を細かく指定して検索できます。条件には「貸したい」「売りたい」といった所有者の意向や、「遊休農地」(耕作放棄地を含む、作物が栽培されていない農地)を指定して探すことも可能です。所有者の個人情報は公開されていませんが、地域の農業委員会を通じてアプローチできます。「eMAFF農地ナビ」で所有者の意向が特に示されていない場合でも、地番から所有者を探すことも可能です。
そのほか、田舎暮らしに特化した物件サイトなどでも農地の情報を得られます。まずはこうした情報サイトを活用し、地域の特徴をつかみながら農地を探してみるとよいでしょう。
チバニアン兼業農学校の修了生は、累計で175名(2025年10月28日現在)が就農をしていますが、そのほとんどは様々な方法で農地を探し、取得しました。また技術要件(研修など)の履歴も考慮が必要となります。
「農地法第3条」の許可条件とは

「農地法第3条」とは、簡単に言うと「この人ならきちんと耕作して農地を活用してくれる」というお墨付きを、地域の農業委員会からもらう仕組みです。この許可がないと、法的に農地を買ったり借りたりすることはできません。 農業委員会とは、地域の実情をよく知る地元の農家などで構成される公的組織で、農地を守り、農業を発展させるための相談窓口です。
「農地法第3条」の許可を得るには、おおむね次のような条件が求められます。
- 常時、自分または家族が農作業に従事できること
- 農地を効率的に利用すること
- 周辺の農地に悪影響を与えないこと
以前は「50アール以上の農地」「年間150日以上、かつ年間900時間以上の作業」などの厳しい基準があり、専業農家でなければ許可を得るのは難しい面がありました。しかし、2023年4月(令和5年4月1日)施行の農地法改正により、下限面積要件が撤廃され、継続的に耕す意思と能力があれば小規模な耕作でも権利取得がしやすくなりました。とはいえ、農林水産省は『10アール程度』『年間900時間程度』を農業従事者の目安としています。
申請に備えて用意したい資料
農地法第3条の許可申請では、次のような資料や説明を準備しておくとよいでしょう。
- 作業・栽培計画(何を、いつ、どう作るか)
- 年間の作業スケジュール(耕起、除草、収穫など)
- 使用する農機具・設備の一覧
- 通勤距離と交通手段(頻繁に通えることの証明)
- 家族や共同耕作者の体制(サポート体制)
二拠点居住であっても、「頻繁に通って継続的に耕せる」ことを示せば認められるケースは少なくありません。ただし、最終的な許可基準は市町村の農業委員会が個別に審査します。そのため、A市ではダメでもB町では通ることもあります。もし一度申請が通らなかった場合は、別の地域を検討するのも現実的な選択です。
また、この農地法第3条の許可を得るためには、同時に耕作のための農地も示す必要があります。つまり、農地を探す → 地主に許可を得る → 農地法第3条の申請、という流れになります。
農地は買うより借りるべし

農地を買うことは、特に都市部に暮らし週末だけ通う二拠点型の農業ではあまりおすすめできません。購入しても管理が難しく、地域に迷惑がかかるおそれがあります。無理に所有するより、借りて耕す方が、今の時代には合っています。
なぜならば自分自身が退職、死亡時での引継ぎにも考える必要があるからです。現在でも多くの農地が「負動産」している中で、相続者が農地を引き継ぐ可能性はかなり高く、また所有者が貸してもよいと言っている中で、購入をするというのは非現実的です。「相続放棄」「国庫帰属制度」があると勘違いされる方がいらっしゃいますが、前者は全て一括放棄で、農地だけ放棄はできません。後者の場合に、農地は広いため、10年間の草刈費用として数百万円かかったり、そもそも手続きが煩雑という問題があります。そのため、わざわざ所有しにいく必要はないと考えています。
農地法改正で広がる、兼業農家の可能性

農地法の改正により、農地を借りるハードルは以前に比べて大きく下がりました。とはいえ、農業の経験がまったくない人が農地法第3条の許可を得るのは簡単ではありません。農地を探すにも、借りるにも、そして農業の知識や技術を身につけるにも、学校や研修で学ぶのが最も近道です。
こうした手続きを体系的に学び、地域と関わりながら実践的に農業を始められるのが、チバニアン兼業農学校です。本校では、農地の探し方や取得の流れを学ぶ授業を設け、千葉県睦沢町や芝山町の地域と連携して農地紹介や取得サポートも行っています。
地域とのつながりを育みながら、農のある暮らしの第一歩を踏み出すために、まず一歩を踏み出してみましょう。焦らず、丁寧に、信頼を育てながら、自分に合った畑を探してみてください。
2025年10月NEWS

【早期入学割引終了間近・13期入学受付】
2026年1月開始の13期入学の早期割引第一弾は、10月末で終了です。また、いま入学いただければ、12期中途の授業から受講することも可能です。入学をご検討される方は、オンライン説明会に参加ください。トップページ上部から簡単に参加できますよ。
季刊地域 秋号掲載
季刊地域 秋号(63号)2025年11月号に、校長の寄稿「定年後コンビニバイトしたくない人のため里山年金」が掲載されました。現在、書籍化を相談中です。
東大特任教授鈴木先生/睦沢講演
- 11月1日(土)13:00~16:00
- Kitみずさわ
- 主催:むつざわヤギ牧場
- 参加希望者はLINE公式よりご連絡ください。
農業人フェア/農業EXPO
- 11月23日(日)10:00~14:00
- 東京ビッグサイト東8ホール
千葉市ベース開設決定(若葉区)
修了生の希望多数ということで、千葉市若葉区にベースを開設します。また花見川区、船橋市も予定しています。
校長のつぶやき
11月1日の鈴木教授のお話は、本をほとんど持っているので、内容はわかっているつもりだが、お会いできるのが楽しみだ。鈴木教授の本の一覧。
来年、4月に向けてチバニアン兼業”林“学校、つまり山林での兼業就労を目的とした学校の立ち上げを検討中。山での様々な収益源を見つけていくというのが目的で、もちろん兼業でできる範囲ということを前提としている。農学校とは、別となるので、どういうカリキュラムになるか、お楽しみに。ちなみに、農学校にアシタカのような人が入ったため、その人を中心に開校予定。

これも来年初旬となると思うのが、コンテナハウスを倉庫兼事務所として農場に建設予定。農地法のルールを守るため、農業委員会と打合せ予定。無指定地域に簡易、かつ安価で建設することにより、二拠点生活を円滑にできる仕組みを作りたい。
さらに、むつざわヤギ牧場の代表と、放牧牛飼育を町内ではじめたいと相談している。放牧牛は、原則、子牛をとることを前提としているが、今回はシュラスコで提供までを前提としていきたい。ちなみに12月初旬に、地元壱岐に帰って、それも視察予定。
農水大臣が小泉さんから変更となったが、はじめは外的印象と年齢で心配したが、非常に評価が高く、農水省出身ということもあり、期待していきたい。だが、AIしんじろがいなくなるのが寂しい。最後に余談だが、残り人生メーターを作ったので、ぜひ下記で計測してほしい。
あなたの「残り人生」は、あと何%
こちらも作ったので、ぜひ計算してみて欲しい。50代でも人生終盤だということがわかる。






