季刊地域・春号:農家が足りない!増やすために働く

季刊地域・春号:農家が足りない!増やすために働く

今回読んだ「季刊地域 春号」の特集は、「農家が足りない!増やすために働く」というテーマでした。2023年に私たちチバニアン兼業農学校が取材された「小さい農業の増やし方」特集の続編なのでしょうか?農家人口の減少が止まらない中で、どうやって新たな農家を増やしていくかという課題は、相変わらず大きなテーマのようです。

特集の中では、最近よく聞く「農村RMO」という仕組みについても触れられていました。ただ正直なところ、この農村RMOという言葉、まだまだわかりにくい印象です。どうやら、地域の中で農地や農作業を支えるための仕組みらしいのですが、具体的にどのように運営されているのか、どれだけ効果があるのかというところまでは、あまり詳しくは書かれていなかったように思います。新しい言葉を覚えるのも大事ですが、もっと「こうやると成功しやすいですよ」という具体例が欲しかったところです。

一方で、今回もやっぱり面白かったのは「粗放栽培」の特集です。粗放栽培というのは、手間をあまりかけず、自然の力を活かして作物を育てる方法のことです。田舎では、高齢化や人手不足で手をかけられない農地が増えているので、こうした考え方はとても現実的だと思います。特に、放置するわけでもないけれど、無理に手をかけすぎずに持続できる農業スタイルというのは、これからますます重要になるでしょう。今回紹介されていた粗放向きの作物や、簡単な管理方法は、学校でも取り入れてみたい内容ばかりで、とても勉強になりました。

ただ、今回の特集全体を通して感じたのは、「どうやって農家を増やすか」という具体的な答えが、少しぼんやりしていたことです。もちろん、これは特集の作り方の問題というより、テーマそのものがすごく難しいんだと思います。もし簡単に農家を増やせる方法があるなら、こんなに問題になっているわけがありません。だからこそ、農家を増やすためには地域全体で取り組んでいくしかない、というのが暗に伝わってきた気がします。

新しく農業を始めるには、土地の問題、収入の問題、技術や知識の問題、そして何より、地域に受け入れてもらえるかどうかという人間関係の問題など、さまざまな壁があります。それを一つずつクリアしていくのは簡単なことではありません。だから、今回の特集のように「増やそう」と声を上げること自体にはすごく意義があると思います。現実は厳しいけれど、それでも何かできることを探していこう、という前向きな姿勢が感じられたのは良かったです。

これからの農業を支えるには、新しく農業を始める人だけではなく、今いる農家が無理なく続けられる仕組みづくりも大事です。農村RMOもその一つの手段かもしれませんが、もう少し身近で、具体的に実践できるモデルが増えてくるといいなと感じました。たとえば、地域ぐるみで小さな農業体験から始めてもらうとか、週末だけの農業サポートを広げるとか、最初のハードルをぐっと下げる工夫が必要だと思います。

私たちチバニアン兼業農学校も、まさにそうした取り組みを実践しています。「いきなり専業農家になるのはハードルが高すぎるけれど、まずは兼業農家としてスタートしてみよう」という提案は、多くの人にとって現実的な一歩です。今回の特集を読んで、改めてこの方向性は間違っていないと感じましたし、これからも新しい農のかたちを作っていくお手伝いをしていきたいと思いました。

本の概要

今号の特集は「農家が足りない! 増やすために動く」。ふだん農業を仕事にしている「基幹的農業従事者数」の急減が話題だ。近年は5年で30万人ずつ減少。現在は100万人余りいるが、今後20年ほどで30万人に減るという政府の予測もある。では、なぜ農家は減ったのか? 特集では、その理由として2024年の「令和の米騒動」に至るまで続いた低米価(21・22年の米農家の所得は時給換算で10円!)にもふれたうえ、今後も減り続けることを前提とせず、「増やすために動く」人たちを取り上げた。

本誌で何度も特集してきた「小さい農業」が急増するのは静岡県浜松市。浜松市の農地利用課と農業委員会は23年の下限面積廃止をチャンスととらえ、「スモールスタート農業」という言葉を編み出した。市内の宅地化が進むエリアには、家に挟まれた小さい農地が点々と残っている。市の応援により、こうした小間切れ農地の「担い手」が市民の中から続々現われているのだ。毎月の農業委員会に図られる新規の農地取得は以前の10倍以上に増えた。

島根県や山形県では、集落営農や農村RMOで農家を増やそうという動きがある。島根県浜田市の小国地区は、地域計画をまとめることになったのをきっかけに、世代横断的に「小国の農業を考える会」が発足。高齢化が進む中でどうやって農地を守るか、担い手をどうやって確保するかという2大課題を前に、いろいろなアイデアが出てきた。同県の邑南町では、農村RMOの立ち上げを機に50~60代の「中継ぎ」世代が農地維持に立ち上がった。山形県の山形市と飯豊町では、「地域まるっと中間管理方式」という新しい形の集落営農で若い移住者から農家を育てる動きが始まった。本誌で何度か取り上げているこの方式。むらの現状に危機感を持ち、動こうという人たちの心に火を付けるらしい。

その他、地域おこし協力隊や特定地域づくり事業協同組合などを利用して農家を増やす動き、地域独自の「農地中間管理チーム」の仕組みなども取り上げた。また、農家が減る中で農地を粗放利用する品目として、枝物とヘーゼルナッツ、クランベリーに注目した。

目次


今号の撮っておき! 地に足をつける

特集:農家が足りない! 増やすために動く
農家が足りなくなったのはなぜだ?
農家が足りない!――昨今の実情

小さい農業を増やす
 下限面積廃止で農地の貸借急増! 細切れ農地が豊かな農LIFEの入り口に 静岡県浜松市
 小さい農業の応援に行政が乗り出した
 農村での暮らし方まで学ぶマイクロファーマーズスクール 兵庫県神戸市 森本聖子
 技術・農地・機械のハードルを下げて 小さい自然栽培農家を増やす 富山県立山町 坂口創作
 百姓百人でにぎやかに暮らすための農地中間管理チーム 新潟県上越市 鴫谷幸彦

集落営農・農村RMOで増やす
 地域計画をきっかけに 農地と担い手のこと、みんなで考えた 島根県浜田市・小国の農業を考える会
 農村RMO立ち上げを機に「中継ぎ」世代が立ち上がった 島根県邑南町・LLC出羽
 地域まるっと中間管理方式で農家を増やす 山形県飯豊町・ふぁーむなかつがわ/山形市・南山形お互いさまの会

農地の粗放利用に向く作物
 遊休田も活かせる枝物栽培 大分県農林水産部園芸振興課 松井大悟
 ヘーゼルナッツ 52 クランベリー

こんな仕掛けで増やす
地域おこし協力隊 JA・行政協働で「担い手プロデュース」 JAみなみ信州担い手支援室 澤栁実也
特定地域づくり事業協同組合 青森県南部町 加納良介
有機市民農園と市の農地バンク 三重県尾鷲市水産農林課 川村星太

人口扶養力を誇り、移住を呼びかける 未来形「地域計画」を 一般社団法人持続可能な地域社会総合研究所 藤山浩

もの申す
 財政審が言っていることは本当か?
 食料安保に必要なのは農家が継続できる「岩盤」直接支払い 東京大学特任教授 鈴木宣弘
 グローバリズムの平成は終わった、令和は「多様化と分散」だ 帝京大学教授 玉真之介

 能登を忘れない――『能登のムラは死なない』刊行記念トークイベントより

集落
 新連載 もうひと花咲かせましょう あなたもわたしも①宮城県石巻市・とやけの森 日野宏敏
 どうする? 農村RMOの運営資金確保策
 農村RMOの始め方④いわて地域づくり支援センター 若菜千穂
 ご当地おもしろスポーツ⑥てっかりんご飛ばし
 空き家のミカタ⑤徳島県・神山町移住交流支援センター吉田涼子

 どう変わる? 多面的機能支払の第3期スタート
 地方で挑戦するあなたへ 地域マーケティング講座④くつろぎたいのも山々 猪原有紀子
 唄は農につれ農は唄につれ⑤ノンフィクション作家 前田和男

地エネ
 超小集電を見た! 土や水、自然物から電気を生み出す技術 茨城県常陸太田市・トライポッド・デザイン

防災
 農業を支援する「もう一つの災害ボランティア」 東北学院大学准教授 齊藤康則/九州大学教授 朝廣和夫
 中山間直接支払を活用して「災害復旧基金」 鳥取県日南町・笠木営農組合 石川哲嗣

山・里山
 新連載 まちづくりは木から始まる① 長野県松川町 田中大也 122
 ウバユリの球根からつくる「ゆり粉」を現代に復活 佐賀市婦人林業研究会 門脇恵
 里山を舞台にフォトロゲイニング 千葉県館山市・ふれあい神余の里

 地撮り31 令和の里山、馬で耕す
 田舎カフェ14 狩猟の楽しさ発信、獣害相談も受ける 岐阜県美濃加茂市 齊藤靖憲
 ゆるくらジャーナル 支部の活動より 本・映画 輝く図書館 読者の声

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