「ふるさと住民登録」で関係人口1千万人 地方創生会議委員提言、二地域居住へ第2住民票

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二拠点生活・兼業農家の促進

最近発表された「ふるさと住民登録制度」の提言は、二地域居住を考える私たちにとって非常に注目すべき動きです。いわば「第2の住民票」として、居住地とは別に関わりのある地域に登録できる制度で、10年で関係人口1,000万人を目指すという政府の方針も明確になってきました。
これまで曖昧だった「二地域居住」の実態が、ようやく政策として形を帯びてきたことは、兼業就農を広げていく私たちにとって大きな前進です。特に、チバニアン兼業農学校が注目したいのは、二拠点目との「交通費支援」の可能性です。都市部で働きながら地方で農業に関わる人にとって、移動コストは大きな障壁ですが、それが公的に支援されるなら、兼業就農への一歩がぐっと近づきます。
もちろん、現時点で制度の詳細がすべて決まっているわけではありません。けれど、全体の流れとして「兼業就農を後押ししよう」という大きな意思が感じられます。つまり、今はまだ準備段階かもしれませんが、この流れを見逃さずにしっかり乗っていくことが大切です。
私たち学校でも、こうした国の制度や政策の動きを常に追いかけ、受講生や卒業生に最新の情報を届けています。今回の「ふるさと住民登録制度」も、その一つとして今後のカリキュラムやサポート体制に反映していく予定です。
二拠点居住が「一部の人のもの」から「誰でも挑戦できる選択肢」に変わる日は近いのかもしれません。都市と農村、どちらの暮らしも諦めない、そんな生き方を支える仕組みが一歩ずつ整ってきている今、この波を活かさない手はありません。私たちチバニアン兼業農学校も、これからさらに情報を集め、皆さんと一緒に“新しい農の形”を築いていきたいと思います。
「ふるさと住民登録」で関係人口1千万人 地方創生会議委員提言、二地域居住へ第2住民票
都市住民が特定の地域へ継続的に関わる「関係人口」の創出、拡大を国が進める中、都市と地方の双方に生活拠点を持つ「二地域居住」など、居住地以外の自治体へ「ふるさと住民」として登録する制度の創設が、政府の地方創生会議で委員から提言された。いわば「第2の住民票」を交付し、住民税の分割納税なども視野に入れたもので、新たな地方創生政策として注目される。
提言は「ふるさと住民登録制度」。関係人口の提唱者として知られる産直アプリ運営会社「雨風太陽」(岩手)の高橋博之代表(50)が11月29日、東京都内で開かれた政府の有識者会議「新しい地方経済・生活環境創生会議」の初会合で提起した。
この日は、15人の委員が過去10年間の地方創生政策の成果と課題を議論した。高橋氏は、元気のある地域の共通点について「開かれた地域社会に外部の人間が労力だけでなくノウハウやアイデア、知恵、スキル、ネットワークをつなげて、内発的発展を遂げているところだ」と指摘。
その上で「いかに外部の人材、つまり関係人口の『けた』を変えて、都市と地方を行き交う人たちを国が責任を持って主導し、地方へ送り込むかが非常に重要だ」と述べ、居住地以外の自治体に「ふるさと住民」として登録できる制度の創設を提言した。また、居住地以外の自治体への財政措置として、住民税の分割納税なども併せて提案した。
座長に選ばれた元総務相で日本郵政社長の増田寛也氏も意見を述べ、高橋氏の提言に言及して「国が二地域居住を法律で後押しするのなら、関係人口をきちんと制度化することが必要だ」と指摘した。
高橋氏は取材に対し「二地域居住者にかぎらず、さまざまな関わり方をする人を関係人口として可視化するのが目的で、二地域居住しなくても、その地域に継続的に関わり地域貢献する人もOKだし、稲刈りのときだけ行く人もOK。なかなか行けなくても分割納税するだけの人もOKと、間口が広い」と説明。
その上で「その関わりの度合いに応じて、各自治体は提供できるサービスを設計していく。牛肉はNG。たとえば、二地域居住者には交通費の負担軽減策も考えられる。ここを競争するところがミソだ」としている。
高橋、増田両氏の発言要旨は次の通り。
高橋博之氏「ふるさと住民1千万人で未来は変わる」 人口が減少していく中で、関係人口を増やすことは、まさに国でなければできない役割だ。その具体的な取り組みとして「ふるさと住民登録制度」をぜひ検討していただきたい。
この制度は、居住地以外の市町村に「ふるさと住民」として登録できるようにするもので、関係人口を可視化することだ。そこは人材情報を蓄積するものにもなってくる。
現在は「ふるさと納税」という制度があるが、これを一歩進めて踏み込んで、個人住民税を二地域居住先と分割納税したり、普通交付税の算定に組み込むことができれば、地方の自治体への財政措置となる。そうなれば、各自治体は自分の地域に関わってくれる人を増やすために「自分の地域にはこういう魅力があるが、こういう課題がある。こういう人材が足りない」と必死にPRして、競争を始めるだろう。
そういう競争を一斉に国民運動として展開していけば、だいぶ局面は変わるのではないか。今後10年間でふるさと住民に登録する人が1千万人できたら、10年後の未来の景色は変わっているのではないか。
増田寛也氏「もう、住民票を2つ認めてもよいのでは」
地方への人の流れの中で二地域居住の話があったが大変重要だ。二地域居住を促進する法律が11月から施行された。国が二地域居住を法律で後押しするということであれば、関係人口をきちんと制度化することが必要だ。
もう、住民票を2つ認めてもよいのではないか。いきなりそこに飛ぶと大変ということならば、住民票相当の法的な証明書のようなものを作って、納税にきちんと結びつける。個人住民税を分割納税したり、普通交付税などに算入するといった制度的な対応だ。
住民票、納税となると、次は投票権の問題があってなかなかハードルが高いが、大事なことは関係人口をきちんと制度化して、地方が彼らを受け入れるということだ。来てもらうだけで大変ハッピーなことだが、一方で、水道やごみ処理など行政サービスの「ただ乗り論」がある。やはりそこはきちんとした制度を作ることが必要だ。
(産経新聞20250623)