季刊地域・秋号:農の風景のために汗をかく

季刊地域・秋号:農の風景のために汗をかく

「季刊地域」は農文協から発行されている雑誌で、農村や里山の暮らしに興味を持つ人々にとって、貴重な情報源です。今回の号では、特に「農村RMO」を推奨し、地域全体で里山の風景を守っていくというテーマが取り上げられており、読者にとって非常に響く内容でした。RMO(地域マネジメント機構)は、地域の住民や団体が一丸となって地域を活性化させるための組織であり、特に農村や山間部での導入が注目されています。これによって、人々の手で地域の自然や景観を守り、次世代に引き継いでいくことができるのです。

日本の農村は相対的に衰退が進んでおり、都市部との人口格差や、後継者不足が大きな課題となっています。こうした状況の中、季刊とはいえ「季刊地域」のようなメディアが存在することは非常に意義深いものです。自分ももともとは図書館でこの雑誌を見つけ、試しに読んでみたのがきっかけでした。その時、特集や記事が興味深く、しかも一冊の価格が1100円程度と手頃であることに驚きました。以前は、定価が3000円ほどと思っていたので、これを知ってすぐに定期購読を始めました。チバニアン兼業農学校も以前取り上げていただいたことがあり、非常に親近感も湧いています。

今号で特に興味深かったのは、草刈り作業を減らすための「イブキジャコウソウ」の活用法についての特集記事です。通常、草刈りは農作業の中でも大変な労力がかかるものですが、このイブキジャコウソウを使うと、防草シートから芽が出て、十分に育ったらシートを再利用できるという利点があります。さらに、この植物は自分で増殖できるため、維持費も抑えられるのです。こうした工夫は、農作業の効率化を図る上で参考になるだけでなく、環境にも優しいと感じました。草刈りの負担を軽減し、長く持続可能な農村経営を実現するための工夫として、とても優れたアイデアです。

季刊ということもあり、次号が早くも楽しみですが、刊行ペースがゆっくりであるため、届く頃には前号の内容を少し忘れてしまうこともしばしばです。しかし、それもこの雑誌の良さと言えるでしょう。毎号、取り上げるテーマや特集にムラがあるのも事実で、まれに「今号は少し物足りないな」と感じることもありますが、そういった意味で「当たり外れも楽しみ」のひとつとして受け入れています。

「季刊地域」を読むことで、農村が抱える課題や、里山の景観維持についての理解が深まり、さらに新しい発見もありました。このようなメディアが存在することは、農業に関心がある人や、農村での暮らしに興味を持つ人々にとって、非常に心強い存在です。

本の概要

風景という言葉は、山奥の手つかずの自然よりは、田畑や里山の様子を表現するのになじみます。景色や景観など似た意味を持つ言葉とそこが違うのではないでしょうか。農村で人が暮らし、農業をすることでできたのが農の風景。いま、農家の高齢化や人口減少で自然と人間のバランスが崩れ、その風景が危機に瀕しています。ひと昔前なら、農の風景の危機といえば敵は農地を潰す開発やごみの不法投棄などでしたが、いま危機の根源は農村自身の疲弊にあります。風景とはそこで暮らす人たちにとっての誇り。ふるさとの風景が危機に瀕しているのに、私たちは手をこまねいてはいられません。農家個人の力だけで手に負えなくなったなら、移住者を含めた地域で暮らす人たち、関係人口、みんなで汗をかく。

目次


今号の撮っておき!畑のごちそう
特集 農の風景のために汗をかくv 人口500人の小さな村 移住者とつくる 古くて新しい農の風景 長野県売木村
農村RMOが必要な理由 山間の農村風景を守るのは地域の支え合い、都会の「自給家族」 愛知県豊田市・しきしまの家運営協議会
農の風景をつくる3要素
アゼをきれいにラクに
草刈りが非農家の若者の仕事になる/ドーム菊で地域にも恩返しほか
草刈りで変わる アゼの植物がつくる風景
ここは「イブキジャコウの里」 岩手県山田町・山田北地区農地・水・環境保全組織
イブキジャコウの特性と栽植・管理の仕方 岩手県農業研究センター水田利用研究室 吉田 宏
段畑の石積みを修復してみた 広島県海田町 桧山敏夫
棚田の風景を守るには
棚田は「遊び場×農業」の場にピッタリ 岩手県一関市金山棚田・playfarm
働きやすさと低コストを同時実現 棚田の圃場整備
ここで生まれた人も移住者も みんなで守りたくなる
「西山の棚田」 三重県伊賀市西山地区
枝物栽培で稼ぎと景観づくり 長崎県平戸市 川上茂次
私も風景にひとこと
ソーラーシェアリングは「農の風景」になるか 市民エネルギーちば 東光弘
体験イベントで里山づくり ミドリカフェ 内田 圭介
樹木葬墓地と農村風景 久保川イーハトーブ自然再生協議会 千坂げんぽう

もの申す
能登復興の希望は「出身者」 二地域居住が地方の自治力を高める 雨風太陽 高橋博之
中山間地域等直接支払制度 第6期はどうなる? 榊田みどり

集落
プチ断熱から始めよう! 古民家でも快適に暮らせる断熱DIY 福岡県糸島市 畠山千春
空き家のミカタ③ 徳島県 神山町移住交流センター 吉田涼子
観光の入り口、関係人口づくりに村ガチャはいかが 長野県白馬村 佐藤敦俊
農村RMOの始め方② いわて地域づくり支援センター 若菜千穂
大学と地域が連携 農村RMO設立 秋田県立大学地域連携研究推進センター 泉牧子
出店本屋「燈日草」始めました(下)福島県昭和村 菅家洋子
ご当地おもしろスポーツ④ 棍棒飛ばし
川谷もよりのビジョンづくり④ 新潟県上越市 鴫谷幸彦

農 1袋のボカシから始める わらしべ長寿戦略 福井県若狭町 三方診療所 岩田竹矢
使い切れないシカ肉を屠体給餌で活かす 野生動物命のリレープロジェクト 尾林克時
唄は農につれ農は唄につれ③ ノンフィクション作家 前田和男

防災
インスタントハウスで被災地に「ただいま!」を取り戻す 名古屋工業大学教授 北川啓介
災害自助体感ゲームPREPPER 岡山県高梁市地域おこし協力隊 小野智行

地エネ
モミガラを燃料に地域熱供給 秋田県大潟村

山・里山
ダケカンバ・シラカンバ バットや家具への利用が見えてきた 北海道立研究機構・森林研究本部 秋津裕志
森林環境税⑧ 林業従事者用住宅を建てた 奈良県黒滝村林業建設課 国本峻

地撮り!29 アジサイで賑わう陸奥の山
田舎カフェ12 もったいないを活かして「防菜青果」 岐阜県関市 中田誠志
ゆるくらジャーナル 本・映画 輝く図書館 読者の声
なぜ君は農家になれないのか?
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