anywhere(エニィウェア)族とsomewhere(サムウェア)族の分断
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anywhere(エニィウェア)族とsomewhere(サムウェア)族の分断
以前、とある本でanywhere(エニィウェア)族とsomewhere(サムウェア)族なる区別を読み、得心したので、とても兼業農家に関係があるので、この旨を書きたいと思います。まず一定の区分けができているので、その語意を書きます。
anywhere(エニィウェア)族の特徴
- 高い教育水準:大学卒業者が多く、専門的な知識やスキルを持つ。
- グローバルな視点:国際的な環境に慣れ親しみ、異文化への理解や適応力が高い。
- 移動性が高い:職業や生活の場を自由に選び、国内外を問わず移動することに抵抗がない。
- 個人主義的傾向:自己実現や個人の自由を重視し、伝統的なコミュニティや家族の束縛から離れている。
- リベラルな価値観:多様性や平等、社会的進歩を支持する傾向がある。
somewhere(サムウェア)族の特徴
- 地域への深い愛着:生まれ育った地域やコミュニティに強い結びつきを感じている。
- 伝統と安定を重視:文化的な伝統や既存の社会構造を尊重し、急激な変化を好まない。
- 移動性が低い:地元に留まる傾向があり、職業や生活環境の変化をあまり望まない。
- 共同体志向:家族や近隣との強い人間関係を大切にし、集団の一員としてのアイデンティティを持つ。
- 保守的な価値観:国家や地域のアイデンティティを重視し、移民やグローバリゼーションに懐疑的な見方をすることがある。
何が問題なのか?
上記で比べてもらうとよくわかると思うのですが、アメリカでいえば、ちょうど民主党と共和党との差のようなものですね。リベラルと保守のような差でもあり、日本でいえば、都市住民を支持母体に持つ野党と地方住民や伝統的保守層を支持母体に持つ与党の差のようにも感じます。
さて、ここで何が問題なのかというと、基本的にanywhere族が国や経済の実権を持ち、その発想からほとんどを決めているということです。そのため、somewhere族の意思が政策などに反映されづらい、また全てがグローバル的発想になってしまっているということです。
例えば、somewhere族の人たちが貧困や物価高にあえいでいる中において、SDGsをはじめとした世界的問題の方を優先するのはどうなんだろうということを疑問に思ってしまうのは当然ですね。トランプが支持を受けるのもそのような背景と不満があるからでしょう。
自民党政治家は、somewhere族の支持を受けているのではないかという疑問もあるでしょうが、世襲が蔓延る昨今、岸田首相をはじめとして、地元出身(somewhere族)の政治家は少なく、somewhere族に擬態したanywhere族と考えるのが自然だと思います。
農家における考え方
さて、anywhere族は、基本的にグローバル化して自由な経済を求めている訳ですが、農業は残念ながらグローバル化すると様々な事情からどうしても厳しい現状があるわけですから保護も必要です。しかし、anywhere族が政策決定に大きな意思を持つわけですから、今後も農業がグローバル化していくことで、somewhere族が守ってきた農業が衰退していくのも当然です。農業人口が100万人を切るのは、2025年といわれています。
ただanywhere族も、食料自給率は国家に最優先課題とお題目は唱えますが、自分でやろうとする人はほとんどいません。ただ議論だけで終わり、全く何も変えません。それこそ、壮大な世界的議論を主張するよりも、家族の自給分だけ、自分で農業をやった方が早いという発想が出てこないのです。
新しい兼業農家はどこに位置にあるのか?
さて、では我々、新規に兼業就農をしようとする者たちはどこに入るのかということを考えてみます。元々は、当校の学費を払い就農する人たちは、一定以上の裕福さを持ち、ほぼ全員がanywhere族ということができるでしょう。地元を九州の離島に持ち、東京で最終教育を受けた千葉在住の僕はanywhere族の中に入るでしょう。人生で30回以上も引っ越しをしていますし…🏃
このanywhere族が、新たに地方のsomewhere族の中で農地を借り、二拠点や移住をして就農をするわけですが、anywhere族ということは原則変わらないと思います。ただし、先ほどからanywhere族の悪い点を取り上げて来ましたが、硬直化し変化を嫌う里山にanywhere族が入り込むことでお互いの良い所がアウフヘーベン(止揚)される利点もあります。
自給率の限界や不安感
ごく一部のanywhere族は、最新情報のキャッチがうまい人が多いですから、当然、日本の農業現状をよくわかっており、この国の食料供給事情が危機的な状況にあるということを分かっている人が多いようです。また元々、地元に根差していないため、緊急時に頼る伝手がないことも理解しています。
そのため、一番確実に自給率を上げるためには、自分自身で作るという極めて原始的な方法を選択するのだと思います。詳しくは、「食料自給率向上が入学のきっかけ?」を読んでみてください。
また老後を豊かにするためには、都会に住み続けることは合理的ではありません。しかし一方で、anywhere族は、故郷を持たない、もしくは一度離れた身ですから、居心地の良い定住や二拠点の場所を探す必要があります。特異な合理的考え方からも、老後地方で住むことや就農して安心感を得ることも重要ということになるのです。
チバニアン兼業農学校の考え方
当校の立ち位置としては、今まで農地法に阻まれ、参入を阻まれてきた良識あるanywhere族を里山で就農させることだと思っています。人を分類することは、理解を深めるために重要ではありますが、それもどこに本当の幸せがあるのかということを考えなければなりません。「都会のネズミ、田舎のネズミ」という寓話がありますが、ある意味この話は、成功した筈の都会のanywhere族が決してsomewhere族より幸せということにはならないことを教えています。
今後、日本もこのまま二つの分断のまま進んでいくと思われますが、高度成長期の一億総中流の時代は終わり、国力の低下もあいまって、anywhere族のみが伸張していくことも見込まれますが、一度立ち止まって、何が本来の幸せであるかということを見直すべき時代に来ているのだと思います。その支援も当校では行っていきたいと考えています。