農業消滅のロードマップ
農業消滅のロードマップ
最近、当校への問い合わせが急増しています。主にLINE公式アカウントを通じた資料請求や、現地見学、オンライン説明会の申し込みが増えている状況です。その理由を考えてみると、まず最も大きな要因として、令和の米不足とされる流通米の不足や値上がりに伴い、今後の食料に対する意識が変化していることが挙げられるのではないかと思います。実際、現地見学に来られる方々と話をすると、「数年間、田んぼを借りて家族分の米だけでも自給したかったが、農地の取得が難しく実現できなかった」という声をよく聞きます。この背景には、数年来の国際情勢の不安も関わっているのではないかと感じます。
農業者の人口推移
今回、少々挑発的なタイトルをつけましたが、これは近未来に現実となり得る問題でもあります。なぜなら、これまで予測されていた以上のペースで農業者の減少が続いているからです。農業者人口の推移を見ると、1970年の約1000万人から2020年には約130万人となり、50年かけて約7分の1に減少しています。この傾向は今後も続くと考えられ、2025年には100万人を切り、2030年には50万人を下回ると予測されています。よほど劇的な農業政策(例:農業者を公務員として雇用するなど)が実施されない限り、この減少傾向は止まらず、やがて農業者が消滅してしまうことが現実となるでしょう。
その他の危機要因
農業者の人口減少を考えれば、普通の人々、特に家族を持つ人々は将来への危機感を抱くのは当然のことです。さらに、国力の低下、日本の少子高齢化、世界的な人口増加、異常気象、年金不安、大地震予測など、いくつもの要因があり、控えめに考えても未来は暗いと言わざるを得ません。国に頼っても解決策は期待できないという意識が広がり、自ら農業に携わることで将来の不安を解消しようとする流れが強まっているのかもしれません。
令和の米不足は食料危機の入り口に過ぎない
そもそも、現在の日本人を取り巻く環境自体が不安定なため、何か不安材料(デマや噂、ニュース)が流れれば、買い占めを抑制しようと呼びかけても効果は期待できません。ただ一つ、買い占めをする必要がない人々がいます。それは自ら農業を営んでいる人々です。このことに、多くの人が気づき始めているのです。
具体的に食料問題はどうなっていくのか?
書いていて自分でも興味を持ったので、各種マイナス要因がどのように食料問題と関わるかと検討してみました。あくまでも一つ一つが推論なので、実際にはもっと絡み合い、その場合、状況はさらに悪くなるものと思います。
国力低下による食料問題
国力が低下すると、食料問題は深刻化する可能性が高いです。国力とは経済力、技術力、外交力などを総合した力を指しますが、これが弱まると国内での食料生産力が低下し、国際市場での食料確保も困難になります。特に日本は食料自給率が低いため、輸入に依存している部分が大きいです。国力が低下することで、輸入能力が低下し、食料の安定供給が難しくなる恐れがあります。また、食料の生産基盤である農業技術の発展や研究が停滞し、長期的には自国での生産力も減少する可能性があります。さらに、経済力が低下すれば食料価格が高騰し、国民が十分な食料を確保することが困難になる可能性も考えられます。国力低下は、食料自給率を高める努力がより重要になる要因です。
世界的異常気象の際の食料問題
世界的な異常気象が発生すると、食料問題は急速に悪化します。異常気象には干ばつ、洪水、台風などが含まれますが、これらの影響で農地が破壊されることや、農作物の収穫量が大幅に減少するリスクが高まります。特に気候変動の影響で、世界各地で食料生産が不安定になり、食料価格の急騰や供給不足が発生する恐れがあります。日本は自給率が低く、輸入に大きく依存しているため、輸入元の国々が異常気象に見舞われた場合、安定した食料供給が難しくなる可能性があります。特に、気候変動が長期化すると、世界的な食料生産のパターンが大きく変わり、特定の作物の生産が極端に減少するなどの影響が考えられます。
首都直下型地震の場合の食料問題
首都直下型地震が発生した場合、食料問題は非常に深刻な事態に直面する可能性があります。首都圏は日本の物流の中心地であり、大量の食料がここを経由して全国に流通していますが、大地震により交通網が遮断されたり、物流が麻痺したりすることで、食料の供給がストップする恐れがあります。さらに、食料備蓄が十分でない場合、首都圏の人口密集地において、食料不足が即座に発生する可能性があります。また、避難生活が長期化する場合、被災者に十分な食料が供給されない状況が続き、健康問題や栄養不足が深刻化するリスクもあります。
台湾有事の場合の食料問題
台湾有事が発生した場合、日本の食料供給にも大きな影響を及ぼす可能性があります。台湾周辺はアジアの重要な海上交通ルートであり、日本はこのルートを通じて多くの食料を輸入しています。台湾有事により海上交通が阻害されると、輸入に依存する日本にとって食料の供給が不安定になる恐れがあります。また、国際的な緊張が高まり、輸出制限や貿易制裁が導入されることで、食料の確保がさらに困難になる可能性も考えられます。日本国内の農業生産を増強する必要性が高まる一方で、食料自給率の低さが課題となり、戦略的な食料備蓄や新しい食料供給ルートの開拓が求められるでしょう。加えて、台湾有事が長期化した場合、世界的な食料価格の上昇や食料争奪戦が起こる可能性も否定できません。
少子高齢化による食料問題
少子高齢化は、日本の食料問題に深刻な影響を与える可能性があります。少子化により労働力不足が顕在化し、農業従事者が減少することで、国内での食料生産が低下する恐れがあります。さらに、高齢化により農家の高齢化が進み、後継者不足が深刻化して、農地の荒廃や生産性の低下が進む可能性があります。これにより、食料自給率がさらに低下し、輸入依存が高まる一方で、食料価格が上昇するリスクも考えられます。また、少子高齢化が進むことで、食料消費パターンが変わり、高齢者向けの食品需要が増加する一方で、若年層の減少により総食料需要が減少する可能性もあります。これに対応するためには、効率的な農業生産システムの導入や、新たな農業技術の開発が必要です。また、地域社会全体での農業支援や、若者の農業参入を促進する政策が重要となるでしょう。
食料危機が起きる確率を検討してみる
人間より、AIの方が冷静な予想をしてくれるのではと、今後、50年間で日本に食料危機が起きる可能性」をChatGPTに検討してもらいました。食料危機に関しては、現時点では、想定し得ないこととなるのですが、リスクはリスクとして誰もがきちんと対処を考える必要があるでしょう。
ChatGPTの予測
日本で今後50年の間に食料危機が発生する確率を正確に予測するのは難しいですが、いくつかの要因を考慮すると、そのリスクはかなり高いと推測されます。
現実的なリスク
世界銀行や国際連合食糧農業機関(FAO)などの報告によると、気候変動や人口増加、地政学的な不安定さが進行する中で、世界全体での食料危機リスクが高まっていることは明らかです。特に、日本のように食料自給率が低く、輸入に依存している国は、輸入元の供給が途絶えるとすぐに影響を受ける可能性があります。これらの要因を考慮し、50年以内に日本が何らかの食料危機に直面する確率は、50%~70%程度と推定されます。
主なリスク要因
気候変動の影響:気候変動による異常気象がさらに頻発し、農作物の収穫が世界的に減少する可能性が高いです。気候変動モデルから予測すると、この影響は今後数十年にわたり強まるとされており、食料危機の引き金になり得ます。
国際情勢の不安定化:地政学的リスク、特に東アジアでの紛争や貿易摩擦が起これば、食料輸入に大きな影響を与えます。このリスクは50年というスパンで考えるとかなり現実的です。
少子高齢化と農業の衰退:国内の食料生産力が減少することで、輸入に依存する割合が高まる一方で、国内農業の衰退が進むリスクが高く、長期的にはこれが食料危機を引き起こす要因になる可能性があります。
予測の難しさ
一方で、技術の進歩や政策対応によって食料危機を回避できる可能性も存在します。垂直農業や人工知能(AI)の導入によって、効率的に食料を生産できる技術が普及すれば、危機を防ぐこともできます。このため、確実に危機が発生するとは断言できないものの、リスクを無視することはできません。
結論
リスクの程度は様々な要因に左右されますが、現時点で50年以内に日本が大規模な食料危機に直面する確率は、50%~70%と考えるのが妥当です。
どうすれば、その食料危機に対処できるか?
いろいろな危険を教えてもらった上で、今度はどうすれば対処できるかをChatGPTに検討をしてもらいました。一般論的な返答とはなりましたが、「自給自足の技術を学ぶ」ということが一番具体的な方法になり、長期間自給率を維持するためには、この方法しかないかと思います。
ChatGPTの予測
日本で今後50年以内に食料危機が発生するリスクに備えて、個々人が取れる対策はいくつかあります。これらの対策は、家庭レベルでできる準備や行動から、地域社会や広範な社会に影響を及ぼすものまで幅広いです。以下に、具体的な対策をいくつか紹介します。
食料備蓄の確保
食料危機が発生した場合、食料の供給が不安定になる可能性が高いです。個人レベルでできる最も基本的な対策は、食料を一定量備蓄することです。具体的には、以下のようなものが推奨されます。
保存期間の長い食料:缶詰、乾燥食品、レトルト食品、乾燥パスタや米など、長期間保存できるものを備蓄する。
水の確保:食料だけでなく、飲料水も必要です。最低でも1人あたり1日3リットルの水を、1週間以上の分量を確保することが理想です。
定期的な点検とローテーション:備蓄した食料や水は定期的に点検し、賞味期限が近いものは消費して新しいものに入れ替える。
自給自足の技術を学ぶ
家庭菜園や都市農業を活用することで、自分自身で一部の食料を生産する能力を持つことが重要です。以下の方法で、個々人が自給自足に向けた準備を進めることができます。
家庭菜園:ベランダや庭を活用して、簡単な野菜(トマト、キュウリ、ハーブ類など)を育てるスキルを身につける。
小規模養殖:鶏を飼って卵を得る、小規模な魚養殖を行うなど、家庭レベルでの食料生産も考慮に入れる。
保存技術の習得:収穫した野菜や果物を保存食(ピクルス、ジャム、乾燥食品など)に加工する技術を学ぶことも役立ちます。
地域の協力とコミュニティ活動に参加する
個人の備えだけでなく、地域社会全体での協力が食料危機対策には欠かせません。地域コミュニティや農業協同組合(JA)などと連携し、食料を効率的に生産・分配する体制を整えることが大切です。
地域農業に参加:都市部でも、地域農業やコミュニティ農園に参加して、食料の自給率を上げる活動に貢献する。
シェアリングや物々交換の仕組みを構築:収穫物や保存食を近隣の人々と分け合うことで、コミュニティ全体で食料を確保しやすくする。
地方農業との連携:都市部の人々が地方の農家と連携し、収穫物の直接購入や農業支援を行うことで、地方農業を支えることも効果的です。
食習慣の見直し
食料危機に備えるためには、普段の食習慣を見直し、持続可能な食生活を取り入れることも重要です。
フードロスの削減:食品廃棄を減らすため、計画的に食材を購入し、余った食材は再利用する習慣をつける。
地産地消:地域で生産された食料を優先的に購入し、地元の農家をサポートするとともに、食料輸送にかかるコストを削減する。
肉の消費を減らす:畜産業は環境負荷が高く、エネルギー効率が悪いことが知られています。持続可能な食生活を実現するため、肉の消費を減らし、植物性食品を増やすことが食料問題の解決に寄与します。
教育と情報の共有
食料危機に備えるためには、個々人が正しい情報を得て、知識を共有することが不可欠です。
食料問題に関する学習:気候変動や国際情勢が食料に与える影響を学び、どういったリスクがあるかを把握する。
防災知識の普及:食料備蓄や自給自足に関する知識を地域や家族と共有し、万が一の危機に備えた計画を立てる。
持続可能な食生活の推進:学校や地域で食育活動に参加し、子どもたちに持続可能な食生活の重要性を教えることも将来の食料危機を防ぐ一助となります。
代替食料の導入
技術の進展により、昆虫食や培養肉、人工タンパク質などの新しい食料が注目されています。これらの代替食料は環境負荷が低く、大規模な食料危機を防ぐ一助となる可能性があります。個々人が代替食料の導入を試み、持続可能な食生活を探ることも重要です。
まとめ: チバニアン兼業農学校からの提言
チバニアン兼業農学校は、首都圏サラリーマンが食料自給を目指すことを一つの目的として、三年間運営を続けてきました。私自身も、離島で育ち、旅館を営む家族の中で育ったため、当初は食料自給に対する意識は高くありませんでした。しかし、祖父は米を育て、父は鶏を飼い、母も60歳を超えてから野菜作りを始めていたため、食料自給は家族にとって自然なものでした。戦中を経験した祖母も、島育ちの影響で食にこだわりがあり、時には偏食もありました。
30代半ばに、大学院でネットショップの講義を行っていた際、「食料自給率コム」といったサイトを作り、都会で食料危機を感じる人々をサポートするアイデアを提案したことがありました。当時は「そんな危機は起きない」と笑い話で済まされましたが、その後、東日本大震災やコロナウイルスのパンデミック、ウクライナ戦争を経て、決して笑えない現実が私たちの前に広がっていることを実感しています。さらに、首都直下型地震や南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくない状況を考えると、将来の不安はますます現実味を帯びてきています。
しかし、私個人としては、家族とともに二拠点生活を送り、睦沢町に農地を所有し、自給自足以上の作物を収穫できる環境が整っているため、食料に対する不安はあまり感じていません。職業柄、多くの農家との繋がりもあり、いざという時には食料の確保ができるという安心感もあります。
食料危機に対しては、農家との知り合いを持ったり、生協の定期購入を活用するなどの対策が考えられますが、最も重要な課題は、物流や通信が遮断された時にどう対処するかという点です。例えば、ウクライナが戦争を何年も続けられている背景には、食料自給率が500%を超えるという事実があります。このような状況を見ると、私たちもいざという時に備え、平時に具体的な対策を検討することが必要だと強く感じます。
ぜひ家庭菜園でもいいので、自分自身で食を確保する具体的な手段を多くの人に持ってほしいと願っています。