食料危機と兼業農家の関係

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食料危機と兼業農家の関係

以前入学してきた生徒と最近入学した生徒の大きな違いは、今回のテーマである食料危機に対する捉え方です。以前は、テレワークも可能となり、仕事の合間で農業もやりやすいというコロナ禍の影響を受けた理由が多かったものです。しかし台湾有事や温暖化に起因する日本の食料危機に対する意識が急激に高まり、それを理由に入学する人が増えたのです。
世界的な人口爆発
さて、今後どのような理由で食料危機が起きるかということを考察する前に、間違いない世界の前提を考えなければなりません。世界の人口は、2000年に60億人であったところ、現在は80億人を突破し、この上昇傾向は続いていきます。日本では少子高齢化が進む中で、世界では人口増が続いていく訳ですから、食料のほとんどを輸入に頼る日本にとって厳しい状況になるのは当然です。
国力の低下
日本の経済力がまだ世界二位であった際には、食料品などの買占めが世界的非難を受けていましたが、現在はむしろ買い負ける方が多いようです。特に中国の経済の勃興や長期的円安により、今後もこの傾向は続いていくものと思われます。まだ奢侈品などで買い負けている段階では問題も少ないと思われますが、今後他国の需要により基本的な穀物などが手に入らない状況にどうなるかというのは、予断を許しません。一方で少子高齢化が続く中で、国力の向上こそ難しい筈ですから、国に頼るという考えは通用しないと多くの人が考えるようになるでしょう。
国防と自給率
この考え方で非常に参考となるのが、中東イスラエルの食料自給率です。なんと、かの砂漠の地で食料自給率90%を達成しているそうです。実は、縁がありイスラエルを訪問したことがあるのですが、移動中にミサイル?が襲来し、平時でも常にこの状況である旨を聞いて母国との大きな認識の違いを感じました。しかし一方で国防の意識の一つとして他国に食料自給率を依拠しないという明確な国としての意思を感じます。各種の農業ベンチャーが砂漠の中で誕生していることも驚きです。つまり緊急時、特に食料においては、外国に頼るということはナンセンスなのです。周りを海に囲まれた日本では、会場が封鎖されたり、封鎖されないまでも輸送量が高騰すれば、食料の安定確保は難しくなります。
異常気象・温暖化の影響
農業を毎年やっていると感じるのが、異常気象が常態化し、収穫に大きな影響を与えています。また日々は、自分の周りのことのみが気になりますが、実際には世界中でこの問題が散発的に起こっています。バタフライエフェクトというブラジルで蝶が羽ばたくことでアメリカにハリケーンが起こるという例えがありますが、世界が昔より一体化した今、この影響を避けることは難しいでしょう。そのため、なおさら食料の自給を日本は求めなければなりません。
南海トラフ、首都直下地震の可能性
50歳を超えた身ですが、この半世紀の間だけで阪神大震災、東日本大震災などを体験し、後50年の間には、この規模の大震災が起きないとはとても考えられません。特に南海トラフ、首都直下地震は定期的なサイクルで地震を繰り返しており、その周期がこれから数十年内にかなりの確率で来ることを内閣府も予想しています。日本の一か所での自身であれば、残りの地域がカバーすることも考えられましたが、首都直下の自身で数千万人規模が被災した場合に、政府がまともに機能していない可能性すらあります。このレベルになると自分自身が常日頃防災意識を持ち対応するくらいしか方法はないでしょう。
緊急時、政府が頼りになるか?
当たり前のことですが、人口1億人強の国において政府の支援だけを頼りにすることは、無理だといえます。その前提をもとに、緊急時政府の支援があった分は、ラッキー程度に捉えるくらいが適切でしょう。また物価の高騰が起こり、慢性的な食料不足となった際に、実際よりも市民の買い占めなどによる人工的食料危機も考えられます。コロナ禍のマスクですら、あのような急激な買い占めが起きましたので、そこから考えると食料はもっと酷いこととなるでしょう。特に資本主義取引だけを前提としている首都圏民の状況はさらに厳しくことは想像に難くありません。
食料の確保、防災には兼業就農が一番

まず当校の考え方として、食料自給率の議論は無意味だと考えています。なぜ無意味かというとそもそも変えることができないことは議論しても意味がないからです。わかりやすくいうと議論をして、どちらかが相手を言い負かしたとしても明日から政府の方針が変わり、食料自給率が変わるわけではなく、現状が続きます。基本的に他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけということです。
議論よりできること
つまり議論をしている暇があれば、自分で生産すればいいのです。特に一粒万倍といわれる稲作は、食料の自給をすることにとても向いた作物です。農水省が発表する作業時間は、機械化を前提として1000㎡あたり23時間です。もちろん、機械がない場合や慣れていない場合には、もっと時間がかかりますが、それでも初心者の当校生徒の場合でも、40時間程度です。1000㎡からは、約600kgの米がとれます。一人あたりの年間米消費量は、約50kgですので、もっと消費したとしても四人家族の食料自給率は100%以上となるでしょう。
なぜ今までそれが出来なかったのか?
そもそも世の中で、兼業就農を前提とした就農の考え方がありませんでした。農業者の多くは、兼業農家であったにもかかわらず、サービス業、工業などと分業して国際競争力を優先させたというのも一因でしょう。また国力が高い時点では、お金の力で食料を買い集めることも難しくなかったからでしょう。都会に住みながら二拠点での就農が難しいということもありますね。
食料の「自産自消」は可能
もともと就農することは、今の仕事をやめて農業に打ち込むことが当然とされていました。しかし収入が激減する退職をほとんどの人が忌避するのも当然です。そこで兼業就農という新たな道を選択することで、退職することなく、就農し、自分で生産し、自分で消費することも可能となるのです。また元々農業は、「結(ゆい)」の発想もあったわけですから、就農を通じて里山との関係性を深め、住居や食料などの確保も可能となるでしょう。
チバニアン兼業農学校とは?
当校は、開校以来、これまで240名以上の入学と80名以上の兼業就農を実現させてきました。首都圏の就農を希望するサラリーマンが、無理なく二拠点での兼業就農を実現し、食料自給率の解決や人生の目標を新たに定めはじめています。当校は、兼業就農を通じて、これからも多くの人たちに安心と夢を提供していきたいと考えています。ちなみに僕は、2000㎡以上の稲作を行い、12000kgの米を得ることで大きな安心感を得ています。