フリーランス農家という働き方

フリーランス農家という働き方

この本を読んで、まず感じたのは、農業の可能性を一気に広げる新しい生き方だということです。農業というと、農地を構えて同じ場所でずっと作物を育てるイメージが強いですよね。しかしこの本では、季節や作物に合わせて全国さまざまな地域を渡り歩く働き方が紹介されています。確かに、いつもと違う景色や人との出会いを楽しめる人には魅力的だと思います。けれども、環境の変化が苦手な人には真似しづらい部分もあるでしょう。毎回違う土地や気候に合わせた作付けや管理をするには勉強が必要ですし、モチベーションを高く保ち続けるのは大変かもしれません。
また、筆者自身が有名であるがゆえに、広報やコンサルなど農業以外の仕事を獲得できる点も興味深いです。そこに収入面の安定を見いだせるのは強みですが、一般の人が同じように収益を上げられるかは疑問が残ります。年齢を重ねるにつれて体力面も課題になりますし、結婚や出産といったライフイベントに対して継続性をどう確保するかも問題です。でも、これらの疑問も、そもそも新しい選択肢として本が提案してくれたからこそ生じたもの。新しい働き方を知るきっかけとしてはとても刺激的で、学ぶところが多いと思いました。
私自身が所属するチバニアン兼業農学校でも、移動しやすさという要素を別のやり方で取り入れて、老後のUターンや移住を後押しできないかと考えます。都市や地方を行き来し、そこに暮らす人たちと関わりながら農業を実践する働き方は、これからの時代に幅広い可能性をもたらしてくれるはずです。そうした意味で、この本は初心者にもわかりやすく、農業の未来について考えさせてくれる良いきっかけとなりました。
本の概要
目次
おカネも 土地もワザもなし。それでも〝農家〟やれます!
年に40回は飛行機で飛びまわり、農場で汗を流す。魅力的な農家の情報を発信し、各地の農家をヨコにつなげる。農業のサポーターを自称する著者の、新しい働き方。
本書の内容
一緒にワクワクの旅を── まえがきにかえて
1章 元気で、視野が広くて、そして儲かっている農家ばかり
─ フリーだからこそ見えたもの
農業って、じつは新しい?!
えっ、この人たち、みんな農家なの?!
2章 おカネも土地もワザもなし
─ フリーランスしかないでしょ!
知りたい農業の情報がない、そしてわかりにくい
女子には新規就農ってかなりむずかしい
3章 一宿一飯のお世話になります
─ フリーランスの仕事事情
進んで自分で仕事を作っていった
農業には様々な関わり方がある─ 幅広いフリーランスの仕事
4章 おためし農業、いろいろご紹介
─ こんな関わり方がある
ゆるく農業に関わってもいいじゃないか
農業となにかを掛け合わせる
5章 素敵な、ミライの農家たち
─ 農業って可能性しかない
農産物を販売しない農家
農家の嫁が自分らしい関わり方を模索する
みんなをミカンのオレンジ色のような笑顔にしたい!
有機農業で「自然と経済」を循環させる
ルックスはモデル??でも鶏の卵にかける思いは深く、強い
飛騨の自然を生かし切る農業
幅広く農業の可能性を見つけていく
超健康体の牛を育てる
自然栽培を推進するまちがある
あとがきにかえて