ナタ1本ではじめる「里山林業」

ナタ1本ではじめる「里山林業」

この本は、山林管理の現場にいる公務員でありながら、自身の経験をもとに里山林業の魅力と可能性を伝える一冊です。特に、枝ものの販売を通じた副収入の方法が詳しく解説されており、里山をただの自然空間としてではなく、収益を生む資源として捉え直すきっかけを与えてくれます。

まず、本書の最大の魅力は「実践的でわかりやすいこと」です。タイトルにもある「ナタ1本」という言葉が象徴するように、特別な道具や大きな投資がなくても始められる方法が紹介されています。初心者にとって、手軽さは大きな魅力です。著者自身が日々の仕事をこなしながら、枝もの販売で副収入を得ている経験談は、読者にとって非常にリアルで参考になります。これから山林を活用して収益を得たいと考える方にとって、具体的な第一歩を示してくれる内容です。

さらに、本書が優れているのは、「売り先」の具体例や販売方法がしっかりと解説されている点です。例えば、枝ものを花材として市場に出す方法や、直接顧客に販売する際のコツなどが、詳細かつ丁寧に書かれています。ただ枝を切って出荷するだけではなく、どのような種類が需要があるのか、どうやって価値を高めるかなど、実践に役立つ情報が満載です。このような現実的なアプローチは、すぐにでも行動を起こしたくなるような説得力があります。

著者が拠点とする栃木県は、自然豊かな里山が広がる地域で、まさに枝ものや木材を活用したビジネスを展開するのに最適な場所です。本書を読んで感じたことは、こうした地域の資源を活かす方法をもっと広めてほしいということです。もし著者が講義を開く機会があれば、ぜひ伺って直接話を聞きたいと思いました。特に、地域ごとの特性を活かした里山の活用法について、さらに深く学べる場を提供してほしいところです。

また、この本は単なる技術書やノウハウ集にとどまらず、里山の持つ可能性や価値についても触れています。日本の山林は長い間放置され、手入れがされていない場所が多くありますが、その中には経済的にも自然保全的にも大きなポテンシャルが秘められています。こうした視点を持ちながら、山林を管理し、収益を得る方法を模索することは、地域全体の活性化にもつながるでしょう。

さらに注目すべき点として、著者が公務員としての立場から、山林の現状と課題を冷静に分析していることが挙げられます。単なる理想論ではなく、現場での経験に基づいた具体的な提案が豊富に盛り込まれています。このリアルな視点は、これから里山林業を始めたいと思っている人にとって、大いに役立つはずです。

本の概要

明るい里山林を取り戻すには、継続した除伐や下草刈り、つる切りなどの手入れが欠かせません。それは以前なら特別な労働ではなく、生活に必要な資源の採取の繰り返しが、里山の管理につながっていましたが、現代社会にそれを望むのは無理というもの。でも、刈り取った草木が収入になれば「手入れという苦労」が「収穫という喜び」になる。

えっ、そんなもの誰も買わないだろうって。普通はそう思いますよね。でも、売れました!多い月は3万円程度の小遣い稼ぎになっています。ぜひ、ページをめくってください。あなたをナタ1本で稼げる「里山林業」の世界に誘ってご覧にいれます。

里山林業とは、山に勝手に生えるお宝植物(天然枝物)で稼ぐ新しい林業の形。ナタ1本で誰でもでき、肥料も農薬もいらない。自分のペースで作業できる。本書は、売れる天然枝物&植物リストから採取・出荷の実際、多様な販路まで、まるごとわかる「里山林業」入門書です。

目次


はじめに
主な植物&用語索引

プロローグ ナタ一本で稼ぐ 里山林業の魅力
 1.里山林業って何
 2.いま、天然枝物が人気
 3.里山林業メガネをかければ裏山が宝の山に見える
 4.時間もコストもかからない
 5.里山林業への道――週1出荷で月3万円稼ぐ、公務員の社会実験
 6.山主にも、借り手にもメリット
 7.バタフライエフェクトを夢見て
 [コラム1]高校生花いけバトルが熱い!

第1章 里山林業の1年――枝物出荷カレンダー
 1.春(3~5月)の里山林業
 2.夏(6~8月)の里山林業
 3.秋(9~11月)の里山林業
 4.冬(12~2月)の里山林業
 [コラム2]街なかにも売れる枝がある

第2章 こんな枝や植物が売れる
 1.長い期間商品にできる樹種
  (1)ほぼ一年中売れる樹種
 [コラム3]触ると危険な植物
  (2)春と秋に売れる樹種
 2.商品になる季節が限られる樹種
  (1)春に売れる樹種
 [コラム4]ブルーベリーのせん定枝でひと稼ぎ
  (2)夏に売れる樹種v   (3)秋に売れる樹種
  (4)冬に売れる樹種
 [コラム5]流通ルートが確立している枝物
 3.商品になる草本
  (1)春に売れる草本
  (2)夏に売れる草本
  (3)秋に売れる草本
  (4)冬に売れる草本
 [コラム6]オータムエフェメラル
 4.つるや枯れものをおカネに換える
  (1)つる
  (2)流木
  (3)枯れ枝、枯れ木
 [コラム7]フジはS巻き、クズはZ巻き!?

第3章 里山林業の実際
 1.山に入る前に
 2.必要な道具と使い方
 3.ナタで枝を切る
 4.山から搬出する
 5.水揚げする
 6.枝を分解する
 7.結束する
 8.ラッピングする
 9.出荷する
 [コラム8]枝折って何?

第4章 いろいろあるぞ 天然枝物の売り方
 1.花き市場で売る
 2.インターネット花市場で売る
 3.農産物直売所で売る
 4.ネット産直で売る
 5.地元の生け花教室に売る
 [コラム9]人気の枝物狩りツアー

第5章 枝物採取のための山づくり
 1.里山林業の適地
 2.抜き伐りで高齢里山林を改良
 3.樹木管理の基本技術
 4.里山林業グループに使える交付金
 [コラム10]その手があったササ類活用法

 あとがきにかえて
 参考文献

著者


 津布久 隆(ツブク タカシ)

1960年栃木県佐野市生まれ。宇都宮大学林学科卒業後、84年栃木県庁に入庁して環境森林部林業木材産業課長、参事兼県北環境森林事務所長等を経て、2021年に定年退職。現在、再任用で県北環境森林事務所林業経営課副主幹。知り合いから借りた約10haの山林で「里山林業」を実践中。

著書に「補助事業を活用した里山の広葉樹林管理マニュアル」全林協 2008年、「木材とお宝植物で収入を上げる 高齢里山林の林業経営術」全林協 2016年

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